課題句「水澄む」 釜田眞吾 選 比叡八瀬滔々洛中水澄める 岩本桂子 御僧は留守看脚下水澄みて 水音に耳を澄ませば水澄めり 山内裕子 何処やら澄む水音と樹々の影 伊藤八千代 水澄める街のスナック客また来 青木百舌鳥 里人の清水(ショーズ)と称へ水澄めり 本井 英
課題句(2023年9月号)
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課題句「水澄む」 釜田眞吾 選 比叡八瀬滔々洛中水澄める 岩本桂子 御僧は留守看脚下水澄みて 水音に耳を澄ませば水澄めり 山内裕子 何処やら澄む水音と樹々の影 伊藤八千代 水澄める街のスナック客また来 青木百舌鳥 里人の清水(ショーズ)と称へ水澄めり 本井 英
季題は「雉子」。「きじ」とも呼べば、「きぎす」ともいう。筆者が自覚的に雉の声を聴いたのは、随分大人になってからのこと。それまで知識として和歌に詠まれたものや、あるいは「雉も啼かずば撃たれまい」のような諺では、知ってはいたが、雄の雉が、二声づつ、もの悲しげに啼く声を知ってからは、特別の心の揺れを覚えるようになった。そして富山、呉羽山で聴いた「雉」の、ちょっともの悲しげな、そして遠くまで聞こえる「あの声」は今でも、耳に甦る。この句の魅力の在りどころは、「啼く」の繰り返し。先ず一度「啼く」と提示しておいて、さらに重ねて、「喉に力を入れて」と繰り返す。そこに雌の雉を慕う、「雉の夫」の切ない気分が否応なく籠められている。作者の心が「雉の夫」に「ひたっ」と寄り添っていることが判る。(本井 英)
雉子啼く喉に力を入れて啼く 北原みゆき 樟脳のにほひの形見春深む 半開きの厩舎の中へ燕かな 忍冬の花の黄色に変はる時 蛇衣を脱ぎて伸び〳〵したるらん 児玉和子 メーデーのデモ信号で膨らみぬ 山内裕子 花よりも莟を高う貴船菊 藤永貴之 羊羹のごとき池面に蛭蓆 稲垣秀俊
海の家 本井 英 朝涼の浜を領してビルの影 青く塗り桃色に塗り海の家 海の家より起き出してくる男 海の家見知らぬ国旗掲ぐるも 貸浮輪にマジックで書く屋号かな 日焼して大胸筋が自慢にて 夏潮を航く五馬力か二馬力か 海の家にも片蔭の生まれそむ 遠泳の赤灯台の今日は遠し 夏潮や水を怖るる病後の身
中干しの真つ只中の青田かな 向日葵の一本愉快そうでもなく 土は灼け石さらに灼け道をしへ ほの暗く氷室の神の祀らるる 草刈機途絶えてよりの村の音 ビーバーの刈り残したる野萱草 赤ぞれのぞれの由々しや雲は夏 夏雲や群馬側から湧きのぼり 柳蘭蕾の塔を誇るかな 闌くるとは色を得ること吾亦紅