日別アーカイブ: 2013年2月7日

改札を過ぎてホームの野分風 (麻里子) 泰三

  季題は、「野分」で秋。秋に吹く強い風の事を言う。野の草を吹き分ける風という意味だそうである。広辞苑などの解説には、台風の事と説明されるが、虚子編歳時記において「台風」は別の題として立てられている。違いは、野分はやはり「風」そのものをさすことだろうか。

  さて、この句。改札口を出て、ホームに出てみると野分が吹き溢れているという。なるほど、改札には屋根があり壁がある。駅によっては、立ち食いそば屋すらある。しかし、東京や福岡といった終着駅でないかぎり、ホームは吹きさらしだ。風は容赦なくホームを吹く抜けてゆく。野分のためダイヤは乱れてしまっている。後は、止まってしまわないことを祈りつつ電車を待つ他はない。そんな景色が目に浮かんだ。

 ただ、野分が風そのものをさすとすれば、「野分風」の「風」は余計なのかも知れないと思った。

 

 

芭蕉林抜けて水辺の曼珠沙華 櫻井茂之(2013年2月号)

季題は「曼珠沙華」。「芭蕉林」も「芭蕉」の傍題として、秋の季題になりうる語ではあるが、「曼珠沙華」の方が季題として強い(この場合は、曼珠沙華の方が期間限定性が高いという理由で)ので、季題としては機能しない。
「芭蕉林」は芭蕉が林のように何本も生い茂っている場所。熊本、江津湖畔のそれが有名だが、一句を鑑賞するには、どこでも良い。芭蕉の林の中に一本の小道が通っていて、そこを抜けたら池か川があった。その畔に、その時期らしく「曼珠沙華」が群れをなして咲いていたというのである。芭蕉の葉の広々としたゆるやかさと曼珠沙華のきりっとした紅。それを映すこともあろう、清流が一幅の「絵」を我々に見せてくれた。(本井英)