月別アーカイブ: 2012年4月

渋谷句会がありました。(英)

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昨日は渋谷句会でした。兼題は「潮干」と「松の花」。渋谷句会は兼題のみの投句。どこまで写生的に詠むことができるかが勝負。ついつい歳時記の解説のような句になりがちです。記憶や想像からスタートした句の世界を、どうリアリズムにするか。難しいところですが、楽しいところでもあります。どうぞ皆さんも気軽にお遊びにお越し下さい。写真はレポータを務められた櫻井さんと児玉さん。

花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第20回 (平成17年4月8日 席題 花一切・虚子忌)

五月晴よく続きたりクラス会
この句の季題は『五月晴』で、鑑賞するときは、今から二月後くらいの気候を鑑賞します。「五月晴」はさつきの晴れ間。さつきというのは、さみだれの月。「さ」は神様のこと。「さつき」は神様の来る月。『早苗』は神様が祝福した苗。「早乙女」は神様に仕える乙女。「さのぼり」は神様が山に上って帰ること。ですから「五月晴」は梅雨の頃の晴れ間。そうやってみると、この句、梅雨の頃にクラス会が設定されていた。たまたまいい日があった。クラス会、明後日だわ。続かないでしょう。と思ったら、三日間続いた。今日のクラス会、とうとう降らなかった。何十年ぶりに会う、そう若くはないご婦人のクラス会という感じがします。着ていくものは、「これでは派手かしら?」などと、いろいろ楽しめて、いい句だと思います。
防風林海に傾く鰆東風
魚偏に春と書いて、「さわら」と言いますが、かますとかバラクーダに近い、割合に獰猛な魚なんですが、斑の入り様が、なだれ模様がいかにも鰆、春の感じですが、そんなに浅いところで獲れる魚ではないんです。そんな大きな海の景色の一角に、防風林が、まあ、防砂林みたいなんでしょうね。なだれているんですから、平らではなくて、急に海に落ち込む防風林で、急に傾いている。そこに強い風が吹いてくる。こんな日は沖から鰆が吹き寄せられてくるんだよなんて、漁師さんが言っているとそんなところだろうと思います。
新しき色おびただし落椿
落椿はほっておくと、どんどん腐ってきて、錆びた色になって、けっこう見苦しい感じがします。ところが、小石川の後楽園とか手入れのいい庭園ですと、まわりに落椿は一つもないです。それでも、一日のうちでも、夕方に来ると、おびただしく落椿が累々とある。そんな特殊な手入れのいい庭園でも、累々とした落椿という感じを私は思いました。
昃りて桜紫めけるかな
元の句、「翳りて」。この字はやっぱり、「かげりて」と読むんだと思いますね。昃は「ひかげる」という字ですね。「昃れば春水のこころ後もどり」(字遣い未確認)という立子先生の句もこの字です。日が翳ってみたら、さっきまでぱんと桜色だった桜が、急にしゅーんと紫色に哀色を帯びた。その瞬間を捉えた句で、なかなか句に馴れた人の句だなあと思って、楽しく拝見した次第です。

採らぬ親切を発揮してしまった人もいましたが、桜の真っ最中で、いい写生句もたくさんあったと思います。

チューリップ(英)

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去年の富山吟行旅行で買ったチューリップが咲きました。二度楽しい気分です。昨日は小諸へ日盛俳句祭の準備で伺いました。浅間山が綺麗でした。今年の日盛俳句祭は7月27日から三日間。一人でも多くのご参加を切望します。ところで今日は花の雨。藤沢三田会俳句部の方々と江の島に吟行に参ります。

句集『TKS』を読んで_矢沢六平

句集『TKS』を読んで  矢沢六平
 気が付いたら誌面でしかお目にかからないまま、ずいぶんと長い時間が経ってしまいましたね。届いた句集の著者近影に会社のブチョーさんが写っているので驚きましたが、よく見ればそのポーズの取り方や笑顔は、まさしく川瀬さんそのもの!でありました。
 色々と懐かしい話をしたいところですが、ここは夏潮の公式HP。さっそく本題の俳句鑑賞に入りたいと存じます。
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マフラーを著しケロヨンの置かれあり
 句集を一読したところ、今回もありました、「秒殺句」が!(意味は麻里子さんの句集の感想文をご覧ください)
 ここは、サトちゃんでもペコちゃんでもなく、ケロヨンでなくてはなりません。なぜならケロヨンは、緑一色に塗られているからです。全身が同じ色だから、そこに巻かれたマフラーが際立ちます。マフラーの色は詠まれていませんが、赤かピンクだったら最高ですね。きっとそうだったろうと思われます。
 では、二読目に入ります。素敵に思えた句を掲載順に…。
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門松を残しシャッター降ろしたる
 商店主はシャッターを降ろして店の中に消えたのでしょう。作者はそこに居合わせた。さほど大きくはない商店街の閉店後の店店の店頭に出してある門松。そこに漂うかすかな淑気…。
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左義長の破魔矢の鈴が焼け残る
 どんど焼きの「跡」に興味があって、過去に何度か句に詠んだことがあるのですが、うまくいきませんでした。そうですね、たしかに、鈴が焼け残っていますね。僕は観察が足りませんでした。
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古宿や音の微かに扇風機
古宿の土間暗きこと涼しきこと
 古宿は、どこまでも寥かです…。今そこには作者一人しか居ません。
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春近し木槌で立ててゐる標
 木槌で打てるのだから、小さい標なんですね。花の名前でも書いてあるのでしょうか。間もなく、人や自然が活発に動き始める「予感」がよくあらわされています。まさに、春近し、であります。
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お彼岸の晴や少々風きつく
 彼岸の感懐は、「あたたかくなってきたなあ」なんだけど、「まだまだ寒いなあ」でもあると思います。「晴」としたところが手柄で、彼岸を迎えた歓びが出ていると思いました。
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螢火の手から手へまた手から手へ
 二三人ではなく、十人前後の小グループが目に浮かびます。だから、「また手から手へ」とあいなる。野郎どもだけではそんなことをするわけありません。きっと男女混合のグループ旅行なんでしょう。青春、ですなあ…。
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懐手して盧遮那仏見上げたる
 「腕組んで」でも「腰に手を当て」でもなく、「懐手」である。冬に見上げる盧遮那仏。説明できないが、よい句であると思う。写生句には、しばしばそういう句がある。
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露天風呂汗して尻に石の跡
 長湯して(それでもまだ去り難いので)、腰掛けて足湯みたいにして露天風呂に浸かっていました。そりゃ、尻に跡もつくはなあ。傑作!でございます。
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蜻蛉生る峠の道は工事中
 工事とは関係なく、自然の営みは着々、淡々と…。作者はきっと、この後視線を眼下の景色に転じたような気がします。
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湯面にはこちら向きたる柚子の尻
 柚子は傾いで湯に浮いているのですね。感じのある句です。
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早速の予定いくつか初暦
 お忙しいのですね。ご愁傷様。初暦である、と気付いたところに大袈裟ではない、ある種の軽い感懐が感じられる。そこがなんとも好もしい。
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あたたかや下の歯生えて笑ひたる
 「笑ひたる」だから、万緑ではなく、「あたたか」がふさわしい季題なのだと思う。
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肌赤き父の運動会帰り
 今日一日、お父さんは頑張りました。
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錦繍の山の傷なるゴルフ場
 ゴルフやスキーは、それ自体は大変面白いスポーツだが、そこに集い来る人々に不愉快な輩が多いので、三十五歳くらいを境にすっかりやらなくなってっしまった。そうなると、山肌に刻まれた傷が何とも痛々しい。今やゴルフ場やスキー場は供給過多だから、どんどん潰して、木を植えなおしていくべきである。
 きちんとした写生句であるのに、私の意見広告に使ってしまい、申し訳ありませんでした。しかし作者も、「傷」という強い言葉を使っています。
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春の灯やアロエ療法研究所
 アロエ療法研究所、がすべて。なんとなくインチキ臭い感じが「春灯」のぼんやりした様子をよく描き出しています。
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マンションの中庭に風夜の秋
 吹き抜けなんだろうけれど、建物に囲われた、四角い小さな中庭を思い浮かべました。「秋の夜」ではなく「夜の秋」としたので、「風」の語が生きた思います。
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 読み了えました。
 句はすべて私の心にスッと入り込んでくるものばかりでした。世には句意を読み解くうちにジワジワと感動が得られる句も存在しますが、スッと来る句が沢山並んでいるのは、読んでいて心から楽しい。
 句集名『TKS』は、あとがきから類推するに、作者としては「感謝(サンクス)」の意なのかもしれませんが、旧知の一読者としては、「たまらんぜ・かわせ・しわす」でありました。
 明るく楽しい句集を堪能いたしました。ありがとう。