サクラとや 本井 英
大鉢の藍のふかさや君子蘭
掌をそへて拭ふ広葉や君子蘭
二日灸三密加持と説かるれば
書割のやうに春潮イルカショー
干しあがるウエットスーツ春の蠅
風止めばゆきわたりたる春日かな
里山のおしるこ色の芽吹きかな
一水のマフラーほどに落椿
丘の日に全開の犬ふぐりかな
玻璃ごしに春日貼り付くリノリウム
瑕瑾なき白ゆきとどく椿かな
蘂の黄のいよよ華やぎ白椿
春寒の小諸は風ぞ厭はしき
豆柴犬の名はサクラとや春浅し
春空に色のながるる川原鶸
嚠喨と囀るときの四十雀
はくれんの傷みそめたるココア色
はくれんは二階の窓のために咲く
はくれんに午後の永さの始まれる
ほぐれつつ畳皺あり紫木蓮