桜鯛 本井 英
嘘であつて欲しきことども万愚節
四月馬鹿うそ楽しめし頃のこと
担桶 の水揺れをさまれば虻止まる
桜鯛
綸 を真下に締め込むは
踏立 ずらせば桜鯛薄闇に
生き締めの血糊美し桜鯛
寿福寺が車窓をよぎる虚子忌かな
椿寿忌の大を為したる小躯 かな
鎌倉の芹の小溝のここにまた
谷戸奧にひとひろがりや花の寺
強風に困惑しをり若楓
爵位とてありし時代の著莪の花
葉の斑また面白きかな二輪草
ほがらかに鶸が渡りて河温む
肉を焼く香のたちのぼる若葉かな
吾亦紅若葉の折り目折り目かな
鼈甲を桶に浸して春深し
藤浪や人を盛りあげ太鼓橋
藤の根にライトアップのコード伸び
どの幹の花とも知れず藤垂るる