投稿者「祐之」のアーカイブ

祐之 について

「夏潮」運営委員の杉原です。 平成二十二年四月に第一句集『先つぽへ』を出版

句集『TKS』を読んで_矢沢六平

句集『TKS』を読んで  矢沢六平
 気が付いたら誌面でしかお目にかからないまま、ずいぶんと長い時間が経ってしまいましたね。届いた句集の著者近影に会社のブチョーさんが写っているので驚きましたが、よく見ればそのポーズの取り方や笑顔は、まさしく川瀬さんそのもの!でありました。
 色々と懐かしい話をしたいところですが、ここは夏潮の公式HP。さっそく本題の俳句鑑賞に入りたいと存じます。
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マフラーを著しケロヨンの置かれあり
 句集を一読したところ、今回もありました、「秒殺句」が!(意味は麻里子さんの句集の感想文をご覧ください)
 ここは、サトちゃんでもペコちゃんでもなく、ケロヨンでなくてはなりません。なぜならケロヨンは、緑一色に塗られているからです。全身が同じ色だから、そこに巻かれたマフラーが際立ちます。マフラーの色は詠まれていませんが、赤かピンクだったら最高ですね。きっとそうだったろうと思われます。
 では、二読目に入ります。素敵に思えた句を掲載順に…。
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門松を残しシャッター降ろしたる
 商店主はシャッターを降ろして店の中に消えたのでしょう。作者はそこに居合わせた。さほど大きくはない商店街の閉店後の店店の店頭に出してある門松。そこに漂うかすかな淑気…。
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左義長の破魔矢の鈴が焼け残る
 どんど焼きの「跡」に興味があって、過去に何度か句に詠んだことがあるのですが、うまくいきませんでした。そうですね、たしかに、鈴が焼け残っていますね。僕は観察が足りませんでした。
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古宿や音の微かに扇風機
古宿の土間暗きこと涼しきこと
 古宿は、どこまでも寥かです…。今そこには作者一人しか居ません。
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春近し木槌で立ててゐる標
 木槌で打てるのだから、小さい標なんですね。花の名前でも書いてあるのでしょうか。間もなく、人や自然が活発に動き始める「予感」がよくあらわされています。まさに、春近し、であります。
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お彼岸の晴や少々風きつく
 彼岸の感懐は、「あたたかくなってきたなあ」なんだけど、「まだまだ寒いなあ」でもあると思います。「晴」としたところが手柄で、彼岸を迎えた歓びが出ていると思いました。
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螢火の手から手へまた手から手へ
 二三人ではなく、十人前後の小グループが目に浮かびます。だから、「また手から手へ」とあいなる。野郎どもだけではそんなことをするわけありません。きっと男女混合のグループ旅行なんでしょう。青春、ですなあ…。
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懐手して盧遮那仏見上げたる
 「腕組んで」でも「腰に手を当て」でもなく、「懐手」である。冬に見上げる盧遮那仏。説明できないが、よい句であると思う。写生句には、しばしばそういう句がある。
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露天風呂汗して尻に石の跡
 長湯して(それでもまだ去り難いので)、腰掛けて足湯みたいにして露天風呂に浸かっていました。そりゃ、尻に跡もつくはなあ。傑作!でございます。
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蜻蛉生る峠の道は工事中
 工事とは関係なく、自然の営みは着々、淡々と…。作者はきっと、この後視線を眼下の景色に転じたような気がします。
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湯面にはこちら向きたる柚子の尻
 柚子は傾いで湯に浮いているのですね。感じのある句です。
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早速の予定いくつか初暦
 お忙しいのですね。ご愁傷様。初暦である、と気付いたところに大袈裟ではない、ある種の軽い感懐が感じられる。そこがなんとも好もしい。
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あたたかや下の歯生えて笑ひたる
 「笑ひたる」だから、万緑ではなく、「あたたか」がふさわしい季題なのだと思う。
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肌赤き父の運動会帰り
 今日一日、お父さんは頑張りました。
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錦繍の山の傷なるゴルフ場
 ゴルフやスキーは、それ自体は大変面白いスポーツだが、そこに集い来る人々に不愉快な輩が多いので、三十五歳くらいを境にすっかりやらなくなってっしまった。そうなると、山肌に刻まれた傷が何とも痛々しい。今やゴルフ場やスキー場は供給過多だから、どんどん潰して、木を植えなおしていくべきである。
 きちんとした写生句であるのに、私の意見広告に使ってしまい、申し訳ありませんでした。しかし作者も、「傷」という強い言葉を使っています。
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春の灯やアロエ療法研究所
 アロエ療法研究所、がすべて。なんとなくインチキ臭い感じが「春灯」のぼんやりした様子をよく描き出しています。
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マンションの中庭に風夜の秋
 吹き抜けなんだろうけれど、建物に囲われた、四角い小さな中庭を思い浮かべました。「秋の夜」ではなく「夜の秋」としたので、「風」の語が生きた思います。
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 読み了えました。
 句はすべて私の心にスッと入り込んでくるものばかりでした。世には句意を読み解くうちにジワジワと感動が得られる句も存在しますが、スッと来る句が沢山並んでいるのは、読んでいて心から楽しい。
 句集名『TKS』は、あとがきから類推するに、作者としては「感謝(サンクス)」の意なのかもしれませんが、旧知の一読者としては、「たまらんぜ・かわせ・しわす」でありました。
 明るく楽しい句集を堪能いたしました。ありがとう。

題詠でGO!【英後選】

題詠でGO!【英後選】
1.三月二十九日 「春炬燵」「田楽」
廊曲がり曲がりて部屋へ春炬燵 かおる
田楽にたつぷり塗るや手前味噌 三佳
田楽やくはへて串を引き抜きて かおる
母のまた同じこと言ふ春炬燵 照子
見舞状したゝめてゐる春炬燵 三佳
宿坊の部屋の真ん中春炬燵    美穂
持ち寄りし菓子美しき春炬燵 照子
荒れて来し海を眺めて春炬燵 祐之
春炬燵温めてありて旅の宿    美穂
折り紙の麒麟三頭春炬燵    昌平
2.三月三十日 「春灯」「亀鳴く」
歳を数えること止めて亀の鳴く 美穂
送別の寄書色紙春灯下    三佳
春の灯や迷路めく路地神楽坂 明朗
春灯下学用品に名付けして    三佳
春灯や厨子のうちなる飛鳥仏 照子
亀鳴くや政争民を置去りに    祐之
コテージの裸電球亀の鳴く    かおる
3.三月三十一日 「浅蜊」「竹の秋」
投句:かおる、照子、明朗、昌平、和子、美穂、祐之
良寛の庵へ続く竹の秋    和子
造船所見えゐて浅蜊ほつてをり 照子
暗がりにこそと浅蜊の動く音 美穂
友眠る小高き墓地の竹の秋    明朗
舌噛んで浅蜊の口の半開き    かおる
掘り当てし浅利の粒の大中小 昌平
マフラーを二本突き出す浅蜊かな かおる
尻濡らすことも楽しく浅蜊掘る 明朗
4.四月一日 「桜」「菜種河豚」
放られしままに乾びて菜種河豚 和子
灯されて色を変へたる桜かな 和子
朝桜ロビーに流すモーツァルト かおる
菜種河豚膨らみながら捨てらるゝ 泰三
寺も町も人も桜に見え隠れ    美穂
市場より海へ放られ菜種河豚 祐之
昨日来て明日は帰る夕桜    かおる
誘はれてのぞく朝市菜種河豚 照子
小さき窓より大桜仰がるゝ    泰三
二三輪咲きし桜の愛ほしき    明朗
以上、四日分の選句稿です。

4月4日池袋句会

4日は池袋句会でした。兼題「春陰」「枸橘の花」と相も変らず難しい兼題でした。

兼題を出した幹事は家族旅行で欠席。

稽古会直後にも係らず英先生を初め、参加者10名、不在投句2名が出席。

私も久しぶりに出席させて頂き、皆様方の高い技術の妙味を堪能しました。

「春陰」については、その言葉時代にニュアンスが色濃く出すぎる嫌いがあり、花鳥諷詠の詩の季題としてどのように詠み込むか、難しい点があるという英先生からのお話がありました。

「枸橘の花」のような植物の季題については、題材の新奇にとらわれず句が詠っている景色がしっかり伝わることがまず大事であると再認識を致しました。

句会に出ると大変勉強になります。

次回は5月2日兼題は「八十八夜」「飛魚」、会場は池袋の勤労福祉会館です。多くの方のご参加をお待ちしております。

【4-3】選句結果~4月1日分題詠でGO!「桜」「菜種河豚」

【4-3】選句結果~4月1日分題詠でGO!「桜」「菜種河豚」

お待たせいたしました。各位の選句が揃いましたので発表します。

逗子の後選は後日まとめて「汐まねき」に掲載いたしますので、ご覧下さい。

なお、選句や特選句の講評が間に合わなかった方は、適宜コメント欄を使って追記下さい。

また、その他の方も、遅れての選句や、句の講評、諸々の感想については当欄のコメント欄を御使い下さい

(承認制のため、表示までタイムラグがある点ご承知おきください)。

 

選句結果~4月1日お題「桜」「菜種河豚」

照子選
◎菜種河豚ばかりが釣れて島のどか 泰三
菜種河豚膨らみながら捨てらるゝ 泰三
朝桜ロビーに流すモーツァルト かおる
脇腹に眼くろぐろ菜種河豚 かおる
市場より海へ放られ菜種河豚 祐之
祐之選
放られしままに乾びて菜種河豚 和子
国有地なりし宿舎の庭桜 明朗
谷埋めし壇林跡や桜散る 照子
◎昨日来て明日は帰る夕桜 かおる
脇腹に眼くろぐろ菜種河豚 かおる
明朗選
能古島の桜咲きしと旅便り 和子
◎新しき職場の桜吹雪かな 祐之
谷埋めし壇林跡や桜散る 照子
菜種河豚ばかりが釣れて島のどか 泰三
誘われて覗く朝市菜種河豚 照子
かおる選
夕桜声明学ぶ僧集ふ 照子
◎新しき職場の桜吹雪かな 祐之
谷埋めし壇林跡や桜散る 照子
市場より海へ放られ菜種河豚 祐之
遅かりし桜の開花よく晴れて 明朗
和子選
顔ゆがみ切つてをるなる菜種河豚 祐之
菜種河豚ばかりが釣れて島のどか 泰三
上千本そのまた奥の桜かな 美穂
遅かりし桜の開花よく晴れて 明朗
◎ぼんぼりを連ね桜の遅れゐる 照子
美穂選
韓の国へ向けて夜桜散りにけり 祐之
◎遅かりし桜の開花よく晴れて 明朗
ひと筋の潮の隔つる桜かな かおる
菜種河豚涼しい顔で生簀中 明朗
ぼんぼりを連ね桜の遅れゐる 照子
昌平選
放られしままに乾びて菜種河豚 和子
菜種河豚ばかりが釣れて島のどか 泰三
新しき職場の桜吹雪かな 祐之
◎市場より海へ放られ菜種河豚 祐之
一木の川面へ映ゆる桜かな 和子
以下に特選句の講評を掲載します。
<照子特選>

◎菜種河豚ばかりが釣れて島のどか 泰三

→初めての季題でした。認識してそれと見たことも
 ありません。こんな感じかなと。

<祐之特選>

◎昨日来て明日は帰る夕桜  かおる

→季題は「夕桜」。二泊三日の旅であったのでしょう。二日目の行程もほぼ終りとなり明日は午前中遊んで帰るのみとなりました。

心地よい疲れと昂揚感を「夕桜」で表すことができました。
ちょっと理屈っぽいかもしれませんが。心の弾みが現れた佳句だと思います。

<明朗特選>

◎新しき職場の桜吹雪かな 祐之

→特選句は様々な職場や学校で新人が期待に胸膨らませている今の季節に相応しい明るい句で季題の桜吹雪にちょっとうるっとしました。

皆様4日間に渡りご参加くださり有難うございました。

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<かおる特選>

◎新しき職場の桜吹雪かな 祐之

→病院、学校、工場、そういった敷地の広い職場だと思います。期待と不安とが表現できていると思いました。

<和子特選>

◎ぼんぼりを連ね桜の遅れゐる 照子

→今年はいつまでも寒く、我が家近くの川沿いの桜並木もまさにこのとおり。

ぼんぼりは毎年決まった時期に、桜の遅速にかかわらず吊られるのであろう。
今春の桜の様子がよくわかる一句。

<美穂特選>

◎遅かりし桜の開花よく晴れて 明朗

→まだかな、まだかな、と待っていた桜がやっと咲いた。その日の天気は快晴。いつにもましてよく晴れているように思えるのは、桜が咲いた嬉しさから。「待っていた」、と言わずに「遅かった」言うことでかえって待ちかねた気持ちが良く伝わってくる。

 

【3-3】選句結果~3月31日分題詠でGO!「浅蜊」「竹の秋」

【3-3】選句結果~3月31日分題詠でGO!「浅蜊」「竹の秋」

お待たせいたしました。各位の選句が揃いましたので発表します。

逗子の後選は後日まとめて「汐まねき」に掲載いたしますので、ご覧下さい。

なお、特選句の講評が間に合わなかった方は、適宜コメント欄を使って追記下さい。

また、その他の方も、遅れての選句や、句の講評、諸々の感想については当欄のコメント欄を御使い下さい

(承認制のため、表示までタイムラグがある点ご承知おきください)。

 

選句結果~3月31日お題「浅蜊」「竹の秋」

照子選
狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
浸されて浅蜊たちまち閉ぢるかな 和子
尻濡らすことも楽しく浅蜊掘る 明朗
良寛の庵へ続く竹の秋 和子
◎砂抜きの浅蜊や今日の株価の上 かおる
昌平選
良寛の庵へ続く竹の秋 和子
狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
◎手入れする人のあるなし竹の秋 美穂
三河湾の広さに散つて浅蜊掘る 照子
尻濡らすことも楽しく浅蜊掘る 明朗
かおる選
暗がりにこそと浅蜊の動く音 美穂
◎大浅蜊げつぷの如く砂を吐く 祐之
お地蔵に供花新しく竹の秋 昌平
尻濡らすことも楽しく浅蜊掘る 明朗
塔頭に日の射していて竹の秋 美穂
祐之選
狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
◎別当の裏の山なる竹の秋 昌平
マフラーを二本突き出す浅蜊かな かおる
対岸の久里浜火力浅蜊掻く かおる
塔頭に日の射していて竹の秋 美穂
和子選
狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
大浅蜊げつぷの如く砂を吐く 祐之
◎手入れする人のあるなし竹の秋 美穂
三河湾の広さに散つて浅蜊掘る 照子
漁師町なりし羽田や浅蜊汁 照子
明朗選
大浅蜊げっぷの如く砂を吐く 祐之
朱宮御所を訪いけり竹の秋 照子
◎御勝手を開きてみれば竹の秋* 祐之
対岸の久里浜火力浅蜊掻く かおる
塔頭に日の射していて竹の秋 美穂
美穂選
良寛の庵へ続く竹の秋 和子
◎狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
竹秋の寺にもありし船着場 照子
舌噛んで浅蜊の口の半開き かおる
濡れそぼち葉の重なりて竹の秋 昌平
漁師町なりし羽田や浅蜊汁 照子
以下特選句とその評を紹介します。
<照子特選>
◎砂抜きの浅蜊や今日の株価の上 かおる
→娘夫婦は浅蜊のバター焼きが大好物。
休日にはワインと大きなフランスパンを揃えサラダと浅蜊、キッチンの新聞紙の上に浅蜊が置かれている。
<昌平特選>
◎手入れする人のあるなし竹の秋 美穂
竹林を近くから見ているのではなく、いくつかの竹の群生地を距離をもって見ている。過疎の進む山村の景として読んだ。
<かおる特選>
◎大浅蜊げつぷの如く砂を吐く 祐之
→浅蜊が砂を吐くところは見たことがありませんが、「げつぷ」といわれて見ると良くわかりました。思い切って俗な表現にしたところが良いと思いました。
<祐之特選>
◎別当の裏の山なる竹の秋 昌平
→季題は「竹の秋」。「別当」と言う言葉で社寺の様子がすっと浮びます。
その裏山はちゃんと手入がされた竹林なのでしょう。さわさわと竹が散ってゆきます。
省略の効いた佳句と思います。
<和子特選>
◎手入れする人のあるなし竹の秋 美穂
→竹林は放っておくとすぐに荒れて手が付けられなくなるそう。
やがて迎える勢いのある竹の季節を前に、やや荒れ始めた竹林の、精彩を欠いている今の感じがよく出ている。
<明朗特選>
◎御勝手を開きてみれば竹の秋 祐之
→あっさりしたお句だが、今はあまり見ないお勝手口からの竹の秋をさらっと詠んで、春深を感じる。
<美穂特選>
◎狛犬のほのと温くしや竹の秋 明朗
折に触れお参りをする、近所の神社の風景。ある日ふと、狛犬に触れてみた。日を浴びて少し温まっている。
春だなと思って辺りを見れば、竹の葉が茶色くなっている。町中の小さな神社に春の足跡をみつけた。
竹の秋、の淋しい印象が「狛犬」によって薄まって感じられるのが面白いと思った。
以上です。追加のコメントや選句がありましたらコメント欄に書き込みください。