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著ぶくれてこぼれおちさうバギーの子   田中金太郎

 季題は「著ぶくれ」。重ね着をして着ぶくれることである。普通には「着る」と書くが、正しい字遣いでは「著る」が相応しく、『虚子編新歳時記』でも『ホトトギス新歳時記』でも「著」の字を用いている。

 「バギー」は本来、オフロード走行可能な自動車を表す語であるが、近年ではやや軽便なベビーカーの一種の意味でも使われ、本句でもそのように使われている。

 いかにも近年の街角で見かけそうな景色として「著ぶくれ」た「子供」の姿が目に浮かぶ。「バギー」の骨組みをなす金属の組み具合、それらに張られたキャンバス地の生地の色合い、そして何よりも、ややその「バギー」の適正年齢をやや超えてしまったような「著ぶくれ」の子供と、もしかしたら、若干「過保護」の傾きの見える(著ぶくれていること自体からも)子供と、その親の姿が目に浮かんでくる。作者は街で「おやおや」と微笑みながら見かけた「子供」の姿をそのまま写生したのであろうが、どこかに軽い批判精神のあることは否めない。(本井 英)

雑詠(2019年12月号)

著ぶくれてこぼれおちさうバギーの子	田中金太郎
葉牡丹の紫の渦にすひこまる
寒禽のするどき声に沼暮るる
病む妻の爪切りてやる小春かな

レジ袋最後に入れる桃二つ		都築 華
炎昼の鶏小屋騒ぎ静まりぬ		町田 良
新涼の侍浜の松に雨			稲垣秀俊
猿山の猿に片陰すらも無く		辻 梓渕

主宰近詠(2020年1月号)

 文反故    本井 英

鶺鴒のたまさか映る忘れ潮

チェンソーの一つの音に島の秋

流れ来て川霧すやり霞なす

一人干す一人のものや葉鶏頭

夜寒さに目を遊ばする文反古(フミホウグ)



猫にお手教へてをれば夜ぞ長き

ピザ釜を据ゑて疎林や小鳥来る

オクラ畑長けさらぼへて花をなほ

秋風の沼をへだてて力芝

観察窓初鴨がなと覗きみる



紫陽花の実となりそれも枯るるころ

追へばやや急ぐそぶりに穴まどひ

あちこちにホース綰ねて園の秋

花ながら雨の茶垣の整はぬ

蔓葉はらひて藷掘りを待つばかり



虫の音と雨音とあひ縫ふごとし

秋潮を熨し自衛艦一〇五

千両の紅の過渡期を美しと

真青なることも佳きかな真葛

見よがしに咲き連ねたる杜鵑草

主宰近詠(2019年12月号)

稲架立てる場所    本井 英

娘等に流行るは手持ち扇風機

白芙蓉白よりほかの色知らず

いつの間に蜩の熄みわたりをり

初潮の大きく退りゐる渚

ただ高く翔るばかりぞ秋燕



丘をまいて御最期川は浅く澄み

 

浜離宮 二句

いま船で着きし人らに庭の秋 潮浅し小鯊あつち向きこつち向き 父祖の地の根津のここらの秋祭 クロネコの自転車便に辻の秋



五十年棲めばわが町鰯雲

鰯雲大きく破れをるところ

蔓の影くつきり置いて通草かな

どんぐりの幼き色の敷きこぼれ

園内を檄の駆けたる曼珠沙華



知つてゐて雀蜂と目の合はぬやう

小諸俳句田圃

この稲田風のげんこつ喰らひたる 稲架立てる場所をまづ刈り取りにけり 稲架裾を楽しくくぐり蝶黄なる 露草の実のぷつちんの苞がくれ

課題句(2019年11月号)

芭蕉忌の地域センターにて句会		児玉和子
芭蕉忌の辞書よりピコと電子音
時雨忌や机辺に古りし肥後守

芭蕉忌や戦なき世に旅しつつ		前北かおる
芭蕉忌の空に数多の熱気球		杉原祐之
四人ともジパングクラブ時雨の忌	本井 英
時雨忌の海の荒れたる旅初日		山内裕子