季題は「著ぶくれ」。重ね着をして着ぶくれることである。普通には「着る」と書くが、正しい字遣いでは「著る」が相応しく、『虚子編新歳時記』でも『ホトトギス新歳時記』でも「著」の字を用いている。
「バギー」は本来、オフロード走行可能な自動車を表す語であるが、近年ではやや軽便なベビーカーの一種の意味でも使われ、本句でもそのように使われている。
いかにも近年の街角で見かけそうな景色として「著ぶくれ」た「子供」の姿が目に浮かぶ。「バギー」の骨組みをなす金属の組み具合、それらに張られたキャンバス地の生地の色合い、そして何よりも、ややその「バギー」の適正年齢をやや超えてしまったような「著ぶくれ」の子供と、もしかしたら、若干「過保護」の傾きの見える(著ぶくれていること自体からも)子供と、その親の姿が目に浮かんでくる。作者は街で「おやおや」と微笑みながら見かけた「子供」の姿をそのまま写生したのであろうが、どこかに軽い批判精神のあることは否めない。(本井 英)