文反故 本井 英
鶺鴒のたまさか映る忘れ潮 チェンソーの一つの音に島の秋 流れ来て川霧すやり霞なす 一人干す一人のものや葉鶏頭 夜寒さに目を遊ばする文反古
猫にお手教へてをれば夜ぞ長き ピザ釜を据ゑて疎林や小鳥来る オクラ畑長けさらぼへて花をなほ 秋風の沼をへだてて力芝 観察窓初鴨がなと覗きみる
紫陽花の実となりそれも枯るるころ 追へばやや急ぐそぶりに穴まどひ あちこちにホース綰ねて園の秋 花ながら雨の茶垣の整はぬ 蔓葉はらひて藷掘りを待つばかり
虫の音と雨音とあひ縫ふごとし 秋潮を熨し自衛艦一〇五 千両の紅の過渡期を美しと 真青なることも佳きかな真葛 見よがしに咲き連ねたる杜鵑草
主宰近詠(2020年1月号)
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