稲架立てる場所 本井 英
娘等に流行るは手持ち扇風機 白芙蓉白よりほかの色知らず いつの間に蜩の熄みわたりをり 初潮の大きく退りゐる渚 ただ高く翔るばかりぞ秋燕
丘をまいて御最期川は浅く澄みいま船で着きし人らに庭の秋 潮浅し小鯊あつち向きこつち向き 父祖の地の根津のここらの秋祭 クロネコの自転車便に辻の秋浜離宮 二句
五十年棲めばわが町鰯雲 鰯雲大きく破れをるところ 蔓の影くつきり置いて通草かな どんぐりの幼き色の敷きこぼれ 園内を檄の駆けたる曼珠沙華
知つてゐて雀蜂と目の合はぬやうこの稲田風のげんこつ喰らひたる 稲架立てる場所をまづ刈り取りにけり 稲架裾を楽しくくぐり蝶黄なる 露草の実のぷつちんの苞がくれ小諸俳句田圃
主宰近詠(2019年12月号)
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