投稿者「管理人」のアーカイブ

主宰近詠(2025年9月号)

姉涼し     本井 英

竹床机軋む爆笑するたびに

帆綱ひき絞れば涼しすぎる風

忘れ果てしことのあれこれ姉涼し

駒草やひろびろ続く主稜線

水槽にトマト浮かべて登山口

啜り上げながらトマトを(トウ)べけり

夕凪の水面皺めて泳ぐもの

栴檀の緑蔭にして明るさよ

炎天に浪の意匠の二天門

氷川丸を訪れてをる揚羽蝶
操舵室の神棚の紙垂涼しけれ

氷川丸涼し虚子ありき杞陽ありき

   小諸日盛俳句祭 七句
夏山に吸ひよせられて来し麓

山国や緑蔭あれば風通ふ

泉辺や映りをるとも知らず佇ち

虚子庵の縁の下なる蟻地獄

語り伝へて虚子庵の紫菀これ

虚子散歩道の片蔭とぎれく 

JRバスに抜かれて夏山路


満潮の平らかに充ち青田べり

課題句(2025年8月号)

課題句「門火」       矢沢六平 選

暮方の空へ煙や門火焚く		児玉和子
風一陣ほむら立ちたる門火かな		飯田美恵子
消えなんとして送火の又赤く		前田なな
門火焚きあり側溝の蓋の上		前北かおる
闇の奥にもう一軒や門火焚く		本井 英

夢の中で起きて働く朝寝かな 浅野幸枝

 季題は「朝寝」。虚子編『新歳時記』では「春は寝心地のよいものである。朝寝の最も心地よいのも春である」とある。たしかに実感として、誰もが「朝寝」は心地のよいものとして満喫したいもの。「睡眠」の科学的なメカニズムは知らないが、何となく「半睡半覚」のような気分がたまらなく甘美だ。作者もそんな状態なのだろうか。実際に起き出して「働かなければ」と思いながらも蒲団に身を横たえ、しかも「夢」の中では「働いている」というのである。「朝寝」というものの持っている「蠱惑」的な魅力を存分に表現した一句と言えよう。(本井 英)

雑詠(2025年8月号)

夢の中で起きて働く朝寝かな		浅野幸枝
庭干しの運動靴に花の塵
とめどなく水琴窟へ花の雨
白シャツを干して叩いて風光る

法名で呼びかけてみる朧かな		村田うさぎ
山火事の手前の山の桜かな		根岸美紀子
句碑に小さく「万」と一文字暮の春	児玉和子
バス通り沿ひに見返り柳かな		冨田いづみ

主宰近詠(2025年8月号)

百合似合ふ人     本井 英

ここにまた棚田百選五月晴

亀の子の甲羅ぺらりとをりのけり

子亀可愛や五百円玉ほどな

畳まれて蕾の隙に花石榴

かいつぶり莕菜畳を割つて浮く

浮巣へと一直線に親もどる

ぬかるみにこぼれしばかりえごの花

草茂りわたり第三駐車場

沿線や色づく枇杷も目に楽し

富士塚のいただきに夏服の人


小綬鶏のにはかに近し草いきれ

老鶯の小刻みの絡繰仕掛

サングラス歌舞伎役者のはしくれで

清元の出稽古に行くサングラス

花菖蒲残り少なが程へだて

山梔子の萎みカフェラテ色なせる

金蛇や浮きて沈みて葉をわたる

よほど降りしや青蘆の腰くだけ

おひろひの夏木立より戻らるる

虎御前とは百合似合ふ人なるべし