主宰近詠(2025年8月号)

百合似合ふ人     本井 英

ここにまた棚田百選五月晴

亀の子の甲羅ぺらりとをりのけり

子亀可愛や五百円玉ほどな

畳まれて蕾の隙に花石榴

かいつぶり莕菜畳を割つて浮く

浮巣へと一直線に親もどる

ぬかるみにこぼれしばかりえごの花

草茂りわたり第三駐車場

沿線や色づく枇杷も目に楽し

富士塚のいただきに夏服の人


小綬鶏のにはかに近し草いきれ

老鶯の小刻みの絡繰仕掛

サングラス歌舞伎役者のはしくれで

清元の出稽古に行くサングラス

花菖蒲残り少なが程へだて

山梔子の萎みカフェラテ色なせる

金蛇や浮きて沈みて葉をわたる

よほど降りしや青蘆の腰くだけ

おひろひの夏木立より戻らるる

虎御前とは百合似合ふ人なるべし