冬ぬくし博物館にキッチンカー 遠藤真智子 十一月の日射し鯨のモニュメント 薄暗きみあかし二灯神の留守 曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花 栗を煮る夫ありし日のやうに煮る 牧野伴枝 すつくりと枯れし姿も男郎花 渡邉美保 焼藷にある重心のごときもの 田中 香 瓢の笛音階なさぬ音ばかり 山内繭彦
雑詠(2024年3月号)
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冬ぬくし博物館にキッチンカー 遠藤真智子 十一月の日射し鯨のモニュメント 薄暗きみあかし二灯神の留守 曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花 栗を煮る夫ありし日のやうに煮る 牧野伴枝 すつくりと枯れし姿も男郎花 渡邉美保 焼藷にある重心のごときもの 田中 香 瓢の笛音階なさぬ音ばかり 山内繭彦
御慶述ぶ 本井 英 生きてゐることを刻々初明り 着古してヒートテックや今朝の春 からうじて電気喉頭御慶述ぶ 虎御前に西行さんに御慶かな スマホごし老の御慶を高らかに 猿曳や茶髪ですこし悪さうで 林道のゲートを開き山始 凍鶴を遠くへだてて駐車場 凍鶴を一時照らす入日かな 枯るるもの同志巻きあひ摑みあひ
著ぶくれて膝だらしなく歩むかな 楷の木の由来謹読著ぶくれて 「仰高」の扁額ゆゆし園は枯れ 枯るる丘の裾をたどりて南武線 寒の日に枝よく光る梨畑 寒の晴明日は姉を見舞はむか 高校生溢るるホーム日脚伸ぶ 庵室に閉門時間日脚伸ぶ 待春の武蔵総社は北面す 川へだて投げ合ふ言葉春近み
(3)添字 干し上げて若布本博多二句
「紅梅」 足立心一選 段丘に濃きも薄きも梅の紅 武居玲子 青空へ撒き散らすやう濃紅梅 雲厚き日や紅梅の匂ひたる 原 昇平 紅梅やぽちりぽちりと落花置き 本井 英 画室には墨と紅梅匂ふかな 岡﨑裕子 荷を解き湯宿の庭の薄紅梅 江本由紀子
季題は「里祭」、「秋祭」、「村祭」とも呼び、秋の季題である。「祭」が夏のもの、都会のものであるのに対して言う。村の顔見知りだけで執り行い、祭客とて大して集まるわけでもないものではあるが、それなりのクライマックスはあって、神輿の渡御なども無事終了。その後は粛々と各員「持ち場」を「片付け」て行く。その行動がまことに「手際」がよく、あっと言う間に「祭」以前の状態に復していったというのである。各地の「夏祭」の多くが観光という側面を意識したイベントになりつつあるのに好対照をなしていることに気づいた一句である。都会で育ち、現代そのものを生きてきた作者が、一転、地方の生活に身を委ねて年月を過ごし、至りついた知恵が見つけてくれた「一場面」であったと言えよう。(本井 英)
片づけの手際よきこと里祭 矢沢六平 芳名を張り出す係里祭 松明の赤さだんだん虫送 はざ棒を芯に藁にほ組み上がる 茶の花の思はせぶりに俯きて 天明さえ 歩まざりし路を思へり秋の声 児玉和子 軒低く五十八の数寄屋暮の秋 柳沢木菟 旅にある夫をおもひて月の虹 冨田いづみ