本土より四国山地や初明り 梅岡礼子 初明り島うすうすと浮かみくる 庭ごとに柚子のたわわや旧街道 冬菜畑母屋と納屋に挟まれて 弥撒終へし神父囲みて御慶述ぶ 原田淳子 縦に引く箒清しや五月場所 山口照男 鰹節のかをりがずつと南風の町 藤永貴之 ふるさとの橋の上なる御慶かな 田中 香
雑詠(2024年5月号)
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本土より四国山地や初明り 梅岡礼子 初明り島うすうすと浮かみくる 庭ごとに柚子のたわわや旧街道 冬菜畑母屋と納屋に挟まれて 弥撒終へし神父囲みて御慶述ぶ 原田淳子 縦に引く箒清しや五月場所 山口照男 鰹節のかをりがずつと南風の町 藤永貴之 ふるさとの橋の上なる御慶かな 田中 香
春水舌を 本井 英 民家園のほまち仕事の接木鉢 春田なる白鳥向きをばらばらに 垂るる雲に頭つつかへ斑雪山 雛飾足裏冷たく拝見す 雛道具に怠るまじき琴棋書画 うすら日に浮き上がりくる雪景色 雲中に日の明るさや揚雲雀 昇りつめてじれてをるなり揚雲雀 落椿をお狐さまの頭にちよんと 岬径のだんだん高し赤椿
芍薬の芽立ち仏の座が囃し 鷹部屋に鷹の剝製春寒し 引き堀の土手に貼りつき金瘡小草 貝母咲く高さを風の流るるよ ちりちりと蓬ぞ摘めば楽しからむ 父と子に脂魚が釣れて春の風 鴨は背の春水の珠ふり落とし 青柳に新幹線の橋はるか 河上の連山霾に閉ざされて 崖下の春水舌を垂れやまず
課題句「フリージア」 坂 廣子 選 八丈富士の裾野ひろやかフリージア 冨田いづみ フリージア摘んで抱へて島のバス 片言の英語通ずやフリージア 前田なな フリージア抱へて辿る夜の道 足立心一 フリージア古民家カフェの庭先に 中島富美子 フリージア生けて寂しさ消えにけり 北尾千草
季題は「仕事納め」。『虚子編新歳時記』、『ホトトギス編新歳時記』共に、「御用納」はあるが「仕事納め」は季題として立てていない。角川『俳句大歳時記』では「御用納」の傍題として立項、例句として宮坂静生の<揺れゐたり仕事納めの弥次郎兵衛>の一句を掲げる。「御用納」となれば官公庁、あるいは古くは朝廷、幕府での業務を納める日。民間あるいは武家でない者が使うのはやや憚られたものであろう。そこで自然と「仕事納め」という言葉が使われ始めた、と思われる。一句の味わい処は「在宅の」。普通に「家に在る」の謂で永らく使われてきた言葉で、「在宅起訴」などという物騒な言葉もある。ところが近年の「コロナ騒ぎ」から「在宅勤務」が大幅に導入され、多くの勤め人達が、無理に通勤しない状態が広まってくると、一つの「暮らし方」として認知されるようになり、掲出句などの状況も誠に納得のいくものとなった。全員が通勤していた頃、「仕事納め」となれば、気心の知れた同志で「一杯やって」から家路に着くのが、当たり前だったものだが。静かにパソコンの電源を切って「終わり」という事になるのであろう。「静かな日」という表現に、一日の静けさも思われて、「令和の句」であると実感させられた。季題に随順した健全な人生を思った。(本井 英)