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主宰近詠(2014年3月号)


うふつと  本井 英

枯れつくし沈みもやらず莕菜たり

石組みは瀧と仰がれ石蕗の花

校門に校長先生冬の朝

寒禽の声からみけりちぎれけり

山影の貼りついてゐる冬田かな



久闊やマスクの下に笑まひ合ひ

賑はひの裏手に菩提子の一寺

枯木縛す豆電球を憎みけり

一陣や鳰の水輪を覆ひ消し

午後からの縮緬波にかひつぶり



へら釣りも疾うに帰りて鳰の水

紫をきはみとしたり草紅葉

著ぶくれのおへそがのぞき鉄棒に

白鳥を頸がひつぱる飛翔かな

着水にむけて白鳥翼張る



湯豆腐のお湯がうふつと笑まふかな

冬草のせばめてをれど扇川

おにぎりが喉過ぎてゆく冬景色

湯の柚子が鎖骨あたりをうろうろす

湯の柚子をつぶさぬほどに力籠め

課題句(2014年2月号)

「薄氷」          岩本桂子選

泥ひゆんと頬に薄氷踏んだれば		山本道子
春の氷圧せばたちまち水上る
薄氷の縁より池の水皺む

薄氷や関守石を橋に据ゑ		田島照子
魚跳ねる競り場のたたき薄氷		前田なな
薄氷の傾く先は水の中		矢沢六平
薄氷に石投げてぼそつと小穴		辻  梓渕

十六夜や明日まで舟の来ぬ島に 梅岡礼子(2014年2月号)

 季題は「十六夜」。陰暦八月十六日の月は、前日の中秋の名月より四十分ばかり遅れて東の空に上がる。その「やや遅れて現れるところ」を「ぐずぐずする」の意味から「いざよう」と呼んだのがその名の起こり。

 作者はどこかの島に旅をされたのであろう。しかしその島は、陸地からそれほど離れてはいない。なぜなら「明日まで舟が来ぬ」が意識に上るということは、陸地からさして離れた場所ではないからだ。陸から遠い離島なら、「明日まで舟の来ぬ」のは当たり前。時期と場所によっては、二日も三日も「舟の来ぬ」ことだってある。

 つまり対岸も見えそうな、しかし「島」には違いない島に泊まることになって、最終便のフェリーが出航した直後の淡い旅愁を楽しんでいるのだ。昨夜の名月にも負けない煌々たる月光を浴びながら、島のやや高みにある宿から海面を見渡しているのであろう。  (本井 英)

雑詠(2014年2月号)

十六夜や明日まで舟の来ぬ島に		梅岡礼子
音立てぬ波も時折島の秋     
秋潮にさざ波おろし金ほどの
近寄れば二つに分かれ月の島

紅梅や流転は尼となりしより		藤永貴之
秋灯に矢立根付と並べみる		藤森荘吉
大方を捨てられ茸狩終る		天明さえ
御城下を遊弋したる銀やんま		稲垣秀俊

主宰近詠(2014年2月号)


どんみりと  本井 英

どの河も北へ流るる時雨かな

雨が撃ち風が揺り上げ鴨の水

観瀑や膝に秋日をあたたかく

瀧水や剥がれ墜ちまた剥がれ墜ち

仰ぐこと止め瀧音につつまるる



里坊に養ふ恙紅葉鮒

ごろごろと青き檸檬も島みやげ

大綿や山の裏へと日は疾うに

綿虫にどんみりとある運河かな

片舷のはげしく破るる芭蕉かな



莞爾たる我あり啄木鳥が指呼に

木の葉髪洗面台の明るさに

小春日に乗じ山路にかからばや

堰堤の隅をこぼれて冬の川

合流のどちらも痩せて冬の川



海底のぐにやりと歪み寒の潮

風を呼ぶとき荻の穂は指ひらく

いづち行かんか酉の市抜けてさて

見えてきて十月桜けぶり咲く

水鳥が水陽炎を崩したる