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雑詠(2014年4月号)

鳰潜る水輪の盛り上がり		山内裕子
枯芝を染めて傾く日射しかな
湖を見に宿を出にけり鳰の笛
今年また土塁に積もりゆく落葉

兎料る別荘番の夫婦かな		児玉和子
花の旅平戸まで来てしまひたる		藤永貴之
おでん屋の客の見てゐるテレビかな	永田泰三
一院に隣る暮しや蒲団干す		兵藤芳子

主宰近詠(2014年8月号)


薔薇が邪魔 本井 英

たかんなを両断すれば楽器めく

五月鯉ピエタの如く抱き降ろし

畳むほどに空気を吐かせ五月鯉

ポストからとり出すときに薔薇が邪魔

茶畝なる腰の深さの狭間かな



とめどなく横転げして竹落葉

河骨の蕾にできし孔深し

盆栽の棚の裾辺の鴨足草

葭原に榛が生ひそめ葭雀

葭原の先の一 本花楝



風波に覆へるあり菱若葉

青蘆に屋根の見ゆるが観察舎

青鷺の嘴の突貫せる刹那

漁師町の空き家がちなる紫蘭かな

釣り糸と海月とつひに関はらず



閘室のみる〳〵深し夏燕

萩若葉長けて砦ぞなせりける

虫喰ひが池塘のやうや丸葉蕗

すつぽんもゐたはず蒲のよく戦ぎ

十薬の一弁がまだ花序抱く

主宰近詠(2014年7月号)


磯の潮干  本井 英

汁椀に三葉ちらせば馴染みゆく

さくら貝いくさを知らぬまゝに老い

黒き尾の見えては隠れ烏の巣

フェアウェイの一本松に古巣かな

芍薬の小蕾はやも蟻を寄せ



牡丹の蕾立派や桃のやう

揚げ舟が遠く浜大根の花

浅蜊掘る額のさきを鰡跳ねる

納骨の一列通る花祭

住職は同級生で菊若葉



校外授業や尺蠖をうち囲み

吾亦紅若葉や畳みがちにして

青鷺は動かぬといふ智恵に満ち

河口から二番目の橋つばくらめ

幾枚も浪よせてゐる干潟かな



さくら貝の歌の碑もある潮干かな

背負籠置く潮干の磯の中ほどに

流れつゝ磯の潮干のなほつゞく

寄居虫を置けば暫くして歩く

磯原へ鶯の声ころげ出し

主宰近詠(2014年6月号)


湯の廊下  本井 英

水鳥の蹴りひろげたる足の裏

剪定やときをり鋸の出番ある

春泥に踏み籠められて藤の莢

薬袋の朱うつくしき涅槃絵図

春川を跨ぎて灯る湯の廊下



立ち話のあいだ鶯途切れをる

揚舟に犬を結はへて防風摘む

一村のすこし高みに彼岸寺

お彼岸の雨の住宅展示場

河いつぱい彼岸の雨の水輪かな



菜の花の黄色や雨と関はらず

よろこんで弾んで手押し耕耘機

切通し抜ける磯風花椿

家も田も失せ梅木立あるばかり

琅玕に耳を当つれば春の風



春の水めらめらめらと橋映す

一景に辛夷の白を散らしけり

頸ねぢて貝母の花を覗きあぐ

春愁の身を樹下に置き橋に立て

兄を悼む

さま〴〵のひとつ〳〵の落花かな

主宰近詠(2014年5月号)


まだ伸びる  本井 英

雪吊の心棒や結ひ継がれたる

除雪機の置かれ駅長室の前

行くほどに水鳥水へ泳ぎ出づ

六花似合ひて秀和レジデンス

墓経をうちかこみをり雪の傘



雪重ねゆく自動車の形かな

パオほどに雪捨ててあり駐車場

スプーンでこそげし小波雪衾

春節の紅灯いよよ濃かりける

春節の獅子伸び上がるまだ伸びる



春節の獅子脱げばまだあどけなや

雪かはきたる紅梅の疲れかな

雪折の杉くぐるとき匂ひけり

残雪のつまる茶畝のはざまかな

斑雪山下山してきてアスファルト



海の明るさ雪しろを招き入れ

トンネルを歩いて抜けて春寒し

夕映えのなきまま昏れて春寒し

コッフェルを置いて斜めや犬ふぐり

ふらここの漢屈託ありと見ゆ