鳰潜る水輪の盛り上がり 山内裕子 枯芝を染めて傾く日射しかな 湖を見に宿を出にけり鳰の笛 今年また土塁に積もりゆく落葉 兎料る別荘番の夫婦かな 児玉和子 花の旅平戸まで来てしまひたる 藤永貴之 おでん屋の客の見てゐるテレビかな 永田泰三 一院に隣る暮しや蒲団干す 兵藤芳子
雑詠(2014年4月号)
コメントを残す
鳰潜る水輪の盛り上がり 山内裕子 枯芝を染めて傾く日射しかな 湖を見に宿を出にけり鳰の笛 今年また土塁に積もりゆく落葉 兎料る別荘番の夫婦かな 児玉和子 花の旅平戸まで来てしまひたる 藤永貴之 おでん屋の客の見てゐるテレビかな 永田泰三 一院に隣る暮しや蒲団干す 兵藤芳子
薔薇が邪魔 本井 英
たかんなを両断すれば楽器めく 五月鯉ピエタの如く抱き降ろし 畳むほどに空気を吐かせ五月鯉 ポストからとり出すときに薔薇が邪魔 茶畝なる腰の深さの狭間かな
とめどなく横転げして竹落葉 河骨の蕾にできし孔深し 盆栽の棚の裾辺の鴨足草 葭原に榛が生ひそめ葭雀 葭原の先の一本花楝
風波に覆へるあり菱若葉 青蘆に屋根の見ゆるが観察舎 青鷺の嘴の突貫せる刹那 漁師町の空き家がちなる紫蘭かな 釣り糸と海月とつひに関はらず
閘室のみる〳〵深し夏燕 萩若葉長けて砦ぞなせりける 虫喰ひが池塘のやうや丸葉蕗 すつぽんもゐたはず蒲のよく戦ぎ 十薬の一弁がまだ花序抱く
磯の潮干 本井 英
汁椀に三葉ちらせば馴染みゆく さくら貝いくさを知らぬまゝに老い 黒き尾の見えては隠れ烏の巣 フェアウェイの一本松に古巣かな 芍薬の小蕾はやも蟻を寄せ
牡丹の蕾立派や桃のやう 揚げ舟が遠く浜大根の花 浅蜊掘る額のさきを鰡跳ねる 納骨の一列通る花祭 住職は同級生で菊若葉
校外授業や尺蠖をうち囲み 吾亦紅若葉や畳みがちにして 青鷺は動かぬといふ智恵に満ち 河口から二番目の橋つばくらめ 幾枚も浪よせてゐる干潟かな
さくら貝の歌の碑もある潮干かな 背負籠置く潮干の磯の中ほどに 流れつゝ磯の潮干のなほつゞく 寄居虫を置けば暫くして歩く 磯原へ鶯の声ころげ出し
湯の廊下 本井 英
水鳥の蹴りひろげたる足の裏 剪定やときをり鋸の出番ある 春泥に踏み籠められて藤の莢 薬袋の朱うつくしき涅槃絵図 春川を跨ぎて灯る湯の廊下
立ち話のあいだ鶯途切れをる 揚舟に犬を結はへて防風摘む 一村のすこし高みに彼岸寺 お彼岸の雨の住宅展示場 河いつぱい彼岸の雨の水輪かな
菜の花の黄色や雨と関はらず よろこんで弾んで手押し耕耘機 切通し抜ける磯風花椿 家も田も失せ梅木立あるばかり 琅玕に耳を当つれば春の風
春の水めらめらめらと橋映す 一景に辛夷の白を散らしけり 頸ねぢて貝母の花を覗きあぐ 春愁の身を樹下に置き橋に立てさま〴〵のひとつ〳〵の落花かな兄を悼む
まだ伸びる 本井 英
雪吊の心棒や結ひ継がれたる 除雪機の置かれ駅長室の前 行くほどに水鳥水へ泳ぎ出づ 六花似合ひて秀和レジデンス 墓経をうちかこみをり雪の傘
雪重ねゆく自動車の形かな パオほどに雪捨ててあり駐車場 スプーンでこそげし小波雪衾 春節の紅灯いよよ濃かりける 春節の獅子伸び上がるまだ伸びる
春節の獅子脱げばまだあどけなや 雪かはきたる紅梅の疲れかな 雪折の杉くぐるとき匂ひけり 残雪のつまる茶畝のはざまかな 斑雪山下山してきてアスファルト
海の明るさ雪しろを招き入れ トンネルを歩いて抜けて春寒し 夕映えのなきまま昏れて春寒し コッフェルを置いて斜めや犬ふぐり ふらここの漢屈託ありと見ゆ