薔薇が邪魔 本井 英
たかんなを両断すれば楽器めく 五月鯉ピエタの如く抱き降ろし 畳むほどに空気を吐かせ五月鯉 ポストからとり出すときに薔薇が邪魔 茶畝なる腰の深さの狭間かな
とめどなく横転げして竹落葉 河骨の蕾にできし孔深し 盆栽の棚の裾辺の鴨足草 葭原に榛が生ひそめ葭雀 葭原の先の一本花楝
風波に覆へるあり菱若葉 青蘆に屋根の見ゆるが観察舎 青鷺の嘴の突貫せる刹那 漁師町の空き家がちなる紫蘭かな 釣り糸と海月とつひに関はらず
閘室のみる〳〵深し夏燕 萩若葉長けて砦ぞなせりける 虫喰ひが池塘のやうや丸葉蕗 すつぽんもゐたはず蒲のよく戦ぎ 十薬の一弁がまだ花序抱く