湯の廊下 本井 英
水鳥の蹴りひろげたる足の裏 剪定やときをり鋸の出番ある 春泥に踏み籠められて藤の莢 薬袋の朱うつくしき涅槃絵図 春川を跨ぎて灯る湯の廊下
立ち話のあいだ鶯途切れをる 揚舟に犬を結はへて防風摘む 一村のすこし高みに彼岸寺 お彼岸の雨の住宅展示場 河いつぱい彼岸の雨の水輪かな
菜の花の黄色や雨と関はらず よろこんで弾んで手押し耕耘機 切通し抜ける磯風花椿 家も田も失せ梅木立あるばかり 琅玕に耳を当つれば春の風
春の水めらめらめらと橋映す 一景に辛夷の白を散らしけり 頸ねぢて貝母の花を覗きあぐ 春愁の身を樹下に置き橋に立てさま〴〵のひとつ〳〵の落花かな兄を悼む