磯の潮干 本井 英
汁椀に三葉ちらせば馴染みゆく さくら貝いくさを知らぬまゝに老い 黒き尾の見えては隠れ烏の巣 フェアウェイの一本松に古巣かな 芍薬の小蕾はやも蟻を寄せ
牡丹の蕾立派や桃のやう 揚げ舟が遠く浜大根の花 浅蜊掘る額のさきを鰡跳ねる 納骨の一列通る花祭 住職は同級生で菊若葉
校外授業や尺蠖をうち囲み 吾亦紅若葉や畳みがちにして 青鷺は動かぬといふ智恵に満ち 河口から二番目の橋つばくらめ 幾枚も浪よせてゐる干潟かな
さくら貝の歌の碑もある潮干かな 背負籠置く潮干の磯の中ほどに 流れつゝ磯の潮干のなほつゞく 寄居虫を置けば暫くして歩く 磯原へ鶯の声ころげ出し