主宰近詠(2014年7月号)


磯の潮干  本井 英

汁椀に三葉ちらせば馴染みゆく

さくら貝いくさを知らぬまゝに老い

黒き尾の見えては隠れ烏の巣

フェアウェイの一本松に古巣かな

芍薬の小蕾はやも蟻を寄せ



牡丹の蕾立派や桃のやう

揚げ舟が遠く浜大根の花

浅蜊掘る額のさきを鰡跳ねる

納骨の一列通る花祭

住職は同級生で菊若葉



校外授業や尺蠖をうち囲み

吾亦紅若葉や畳みがちにして

青鷺は動かぬといふ智恵に満ち

河口から二番目の橋つばくらめ

幾枚も浪よせてゐる干潟かな



さくら貝の歌の碑もある潮干かな

背負籠置く潮干の磯の中ほどに

流れつゝ磯の潮干のなほつゞく

寄居虫を置けば暫くして歩く

磯原へ鶯の声ころげ出し