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主宰近詠(2016年7月号)


旅愁とよびて  本井 英

豹紋のパンプス青き踏みて立つ

富山稽古会 十六句

おもちや箱開いたやうに囀れる 教はりてうはみず桜ほわつと白 雉の夫茶藪をぬけて梨棚へ さきほどの雉なるべし遠く啼く



 声目嗄れて雉の夫あはれ

雉の夫間遠に啼いて風の村

啼くほかは日がな一日雉の夫

雉聴くや旅愁と呼びて可ならんか

伝ひゆく風の遅さに八重桜



新湊大橋蜃気楼日和

囀のからつからつと川原鶸

蒲公英やびぶらの爪を矯めなほし

いつの間に丘の高きに蕨採り

蕨採る一日おきに同じ場所



つばくらの今朝の低さや膝掠め

若木には無理させずとよ梨花の棚

根にちかく菖蒲の花のつつましや

さやりさやりと吾亦紅若葉これ

丁字草の紫人に阿ねざる

主宰近詠(2016年6月号)


まんま食ふこと     本井 英

照らされてお水送りの瀧枕

松明やお水送りも火もてなす

うはずりて鱵の見ゆる波間かな

雛の忌の立子の墓にチョコレート

奥まりてよそよそしさよ御殿雛



香道のことは判らず雛調度

薙刀もありてよからん雛調度

蝌蚪生れて世になじまんと尾を振れる

紫陽花の芽吹き口笛吹くやうに

お数珠玉からびて真白水温む



草萌のなぞへの囲む土俵かな

樺太への海を往き来せしと

漁る奥尻島は丘低き

文豪も文士も絶えて春寒し

春寒の爬虫類館窓少な



目にすこしうるさいほどに梅散れる

囀を仰げば柄長そのかたち

鷺が餌を得るはなかなか水温む

涅槃図を掛けてさつさと沙弥消えし

ままごとはまんま食ふこと蝶の昼
 

主宰近詠(2016年5月号)


二百号とて   本井 英

島山は近づくほどに笑むと見ゆ

島径にぽかと空地や仏の座

島の春市長選挙のポスターも

明日葉にかくれ煙草のコックかな

仲間とははぐれたまんま島椿



下萌に命中したる鳥の糞 (マリ)

草青み釈宗演の隠居寺

草萌のここの直下が破砕帯

きしめんのあぶらげ甘し春寒し

梅林は天守仰ぐによきところ



濡縁のなぐり滑らか笹子鳴く

坂あれば橋橋あれば春の水

ここにまた花街ありきと温む水

春愁を追ひ出してゆく護摩太鼓

谷戸ごとの一ヶ寺二ヶ寺春浅し



春の浅さの台東区江東区

忘れけり忘れられけり春浅し

マスクの眼のぞき久闊叙しにけり

春浅し病みて不参の人のこと

あたたかや二百号とて遠からず

主宰近詠(2016年4月)


とらやは重し       本井 英

鳥影の流るる障子福茶汲む

食積や駅伝テレビ点いたまま

初夢の妻には言はぬ部分かな

初夢の中で死体となつてをる

救急車とすれちがひたり福詣



来宮の駅が真下や寒見舞

手に提げてとらやは重し寒見舞

寒鯉の睦むともなく争はず

煮凝がごはんで溶けてゆく香り

干蒲団叩くや音は遅れ着き



娘の暮らし訪へば葉牡丹植ゑてをる

馬印のごとくにアロエ咲きわたり

池普請腰の深さを往き来して

池水のとことん濁り池普請

先週の雪まだ残り枕ほど



鉤の手に折れてつぎつぎ冬座敷

岬宮に位階とてあり冬椿

朝の日に覗き込まれて寒椿

裸婦像の尻の美し春を待つ

まだといふ言葉たのもし春を待つ

主宰近詠(2016年3月)


鮪船       本井 英

鮪来るころ風に風波に波

鮪船舳を天に沖したる

客もなき日々の水腰障子かな

撞木やや細きを吊りて落葉寺

雪吊や代々つゞく医家と見え



水洟や野鳥観察舎にひとり

顔見世の曽我の対面はしけやし

顔見世のはねてホテルに戻るのも

風邪ひきて二重瞼がちよと嬉し

花枇杷や花街のころを誰も知らず



ほたほたと止まらぬ蛇口枇杷の花

川漁を閉ぢて楮を蒸す日頃

よく漉けし紙はほゝゑみをるといふ

火の森のごとく見事やシクラメン

鴨の頬お多福風邪のやうに張り



池からはどれも登りや落葉坂

鎌倉や懐浅く山眠る

水音を小さくこぼし山眠る

午にちかく日の届かざる枯木寺

青木の実色づいていく途中かな