二百号とて 本井 英
島山は近づくほどに笑むと見ゆ 島径にぽかと空地や仏の座 島の春市長選挙のポスターも 明日葉にかくれ煙草のコックかな 仲間とははぐれたまんま島椿
下萌に命中したる鳥の糞 草青み釈宗演の隠居寺 草萌のここの直下が破砕帯 きしめんのあぶらげ甘し春寒し 梅林は天守仰ぐによきところ
濡縁のなぐり滑らか笹子鳴く 坂あれば橋橋あれば春の水 ここにまた花街ありきと温む水 春愁を追ひ出してゆく護摩太鼓 谷戸ごとの一ヶ寺二ヶ寺春浅し
春の浅さの台東区江東区 忘れけり忘れられけり春浅し マスクの眼のぞき久闊叙しにけり 春浅し病みて不参の人のこと あたたかや二百号とて遠からず