主宰近詠(2016年5月号)


二百号とて   本井 英

島山は近づくほどに笑むと見ゆ

島径にぽかと空地や仏の座

島の春市長選挙のポスターも

明日葉にかくれ煙草のコックかな

仲間とははぐれたまんま島椿



下萌に命中したる鳥の糞 (マリ)

草青み釈宗演の隠居寺

草萌のここの直下が破砕帯

きしめんのあぶらげ甘し春寒し

梅林は天守仰ぐによきところ



濡縁のなぐり滑らか笹子鳴く

坂あれば橋橋あれば春の水

ここにまた花街ありきと温む水

春愁を追ひ出してゆく護摩太鼓

谷戸ごとの一ヶ寺二ヶ寺春浅し



春の浅さの台東区江東区

忘れけり忘れられけり春浅し

マスクの眼のぞき久闊叙しにけり

春浅し病みて不参の人のこと

あたたかや二百号とて遠からず