まんま食ふこと 本井 英
照らされてお水送りの瀧枕 松明やお水送りも火もてなす うはずりて鱵の見ゆる波間かな 雛の忌の立子の墓にチョコレート 奥まりてよそよそしさよ御殿雛
香道のことは判らず雛調度 薙刀もありてよからん雛調度 蝌蚪生れて世になじまんと尾を振れる 紫陽花の芽吹き口笛吹くやうに お数珠玉からびて真白水温む
草萌のなぞへの囲む土俵かな 樺太への海を往き来せしと 漁る奥尻島は丘低き 文豪も文士も絶えて春寒し 春寒の爬虫類館窓少な
目にすこしうるさいほどに梅散れる 囀を仰げば柄長そのかたち 鷺が餌を得るはなかなか水温む 涅槃図を掛けてさつさと沙弥消えし ままごとはまんま食ふこと蝶の昼