旧火口底の底まで花芒 波多野美津子 (2014年1月号)

 季題は「花芒」、「芒」の傍題であるが、美称といってよいかもしれない。「旧火口」は「新火口」に対する言葉。つまり古い火山で、「新火口」は今でも、盛んに噴煙を上げたり、あるいは一木一草も許さぬ赤茶けた山肌を曝しているが、「旧火口」の方はすっかり落ち着いて、「芒」まで生えているというのである。そして「花芒」は、よく見ると「旧火口」の「底の底」までびっしりと敷き詰めたように生えている。作者は火口の縁の崖の上から覗き込んでいるのであろう。

 まことに雄大な大景を詠んだ句で、自ずから秋晴の空や、やや強い秋風が想像される。  (本井 英)

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