主宰近詠(2015年5月号)


邸うちなる    本井英

風吹きて縦に伸びゆく鴨の陣

霜柱きらり暫くしてきらり

池普請の底ひぺらぺら氷るかな

雨の野の遠き白梅心ひく

雨流れはじめし梅の径かな



栄螺積む皿魴鮄が伏せる皿

ミモザの黄咲くとき重さなかりけり

五つ六つ雨に閉ざせる犬ふぐり

日ざしまだ高からねども犬ふぐり

荻野屋の釜飯の釜犬ふぐり



田水なほ冷たからんに義仲忌

神鶏の交るを追ひて禰宜若し

初午やとろりとろりと遠太鼓

初午の邸うちなる小賑はひ

初午に見かけて母の割烹着



初午の客やぱらりと下船せる

恋あはれ鞘当あはれ猫の声

牡丹の芽を育みし日の沈む

繊々と現れ旧正の二日月

春時雨情けはもつれやすと句碑