主宰近詠(2014年12月号)


切られてんげり    本井 英

草蜉蝣髭撓みたり直りたり

草蜉蝣髭を綰ねてみせもする

甚平やそげてかなしき尻の肉

米山へ見ゆるかぎりの豊の秋

三つ巴の一頭離脱蝶の空



吻の黄のたのもしきかな大秋刀魚

秋刀魚掴めばくんなりと彎曲す

鉦叩明窓浄机とはゆかず

釣人の背に燃えてゐる曼珠沙華

曼珠沙華の白とは呼べど象牙色



菱提げてこれが実これが浮袋

いくたびも浮かべる湖面揚花火

石橋の大一枚を秋水に

鯉の尾が撃てば秋水動乱す

やがて橋にかかる彼女や庭の秋



叶ふ石あれば坐しもし水の秋

村の道そこらの韮も実となりて

青鷺のひもじき素振りとてもなく

墓主は切られてんげり法師蟬

受け答へ礼儀正しく鯊を釣る