主宰近詠(2014年10月号)


折れつぱなしの  本井 英

今日から七月帆船のカレンダー

涼風や横十間川(ヨコジツケン)は南北に

半夏生の白うすれゆく日々にして

サングラスかけて身振りも大袈裟に

丁稚から聟になほりて冷奴



太虹の(コウ)(ヘリ)にも濃紫

タゴールのスナップ黴の展示室

藤棚のゆさと茂りて風のむた

長押なる槍と長刀夏座敷

家具の無きことが即ち夏座敷



卒塔婆書く時折麦茶啜りつつ

にいにいの声の貼りつく大樹かな

にいにい蟬膝より低く聞こゆなり

氷旗飛沫の紺を散らしたる

みそはぎの地味と見ゆ派手とも見ゆる



生りものは今年よかりし土用かな

日傘もう池の向かうに至りをり

日傘踏み出す花道のやうな橋

涼風や池半分を皺めたる

吹く風に折れつぱなしの夏帽子