主宰近詠(2014年9月号)


声のする 本井 英

震災碑戦災碑木斛の花

蝸牛なりには右顧も左眄もす

五月雨に延べて黒々磯畳

とりやまの今二 処青葉潮

とりやまの移りて遠し青葉潮



梅雨寒の二の腕を掌でつつみをり

蜘蛛が殺るときは必ず羽交締め

遠雷や中華鍋より炎立ち

夏雲や礼もて始むドレサージュ

夏山にへばり鎌倉権五郎



神紋は並び矢羽根ぞ風薫る

花榊ことに蕾のよろしさに

谷戸を抜け出て夏潮に真向かひぬ

自転車を溺れしめ草茂るかな

育ちゆく入道雲に肩背中



熊蜂の止まれば擬宝珠ゆあーんとす

くちなはの抱擁のするする解くる

木耳やここに畑跡屋敷跡

山峡の月の形の植田かな

夏萩の別荘今日は声のする