季題は「寒牡丹」、本来初夏に咲く「牡丹」をさまざまに手を施して冬に咲くように仕立てたもの。冬場にはふさわしくない豪華さを喜ばれる一方、その痛々しさを感じる向きもある。手のかかることもあって個人の庭で楽しんでいる話は聞いたことがなく、筆者の印象では上野の山の東照宮、鎌倉の八幡宮あたりが思い浮かべられる。
「冬牡丹園」は朝から開園、ひとしきり賑わって閉園時間も近い時刻であろうか、斜めからの緩やかな光線が「藁ぼっち」の中の「寒牡丹」に静かに当たっている。周りに客の姿はなく、作者と「寒牡丹」は語り合っているようにも見える。 (本井 英)