島うらら 本井 英
雪の衾の林檎園葡萄園
園内に瀧ふたつある余寒かな
薄氷を捧げて景を覗くかな
出くはして我が眼をさぐる春の猫
信号の赤の濃うなる暮雪かな
雪が雨にかはりはじめし水輪かな
草萌を吹くエアコンの室外機
盆梅の正面を決めかねてをり
福岡、室見川三句
橋杭にまとはりながら温む水
一人遅れ
素魚 料理始まらず
素魚 や鉢の翳りに身をよせて
博多二句
霾へ向け出港したり五島便
今宵またネオンが浮かぶ水温む
能古島四句
だん〳〵に雲厚くなる磯遊
半鐘は疾うに失せをり島うらら
波音がはるか下より紅椿
出港や島の全景春雨に
名護屋城二句
春雨に樟の香充つる三の丸
落椿遊撃丸にころげ落つ
たち去りてまたたち去りて西行忌