発刊にのぞんで(2007年8月)

「夏潮」発刊にのぞんで一言申し述べます。

私が俳句という文芸を知りましたのは母が星野立子先生に俳句を教えていただいておった関係からでした。その後、慶應義塾中等部を経て慶應義塾高等学校に進学し、清崎敏郎先生に俳句を見ていただくようになってからは、俳句が楽しくてしかたがないようになりました。慶應義塾大学文学部国文学科、さらに大学院の修士課程・博士課程と学びながら、俳句では星野立子・高木晴子両先生のご指導を得ることともなりました。星野立子先生の「笹子会」、清崎先生の「夜長会」が大切な勉強の場でした。

昭和四十八年、鎌倉虚子庵売却に際して虚子の蔵書整理を願い出て許可されたことが、私のその後の人生を決定したと思っています。それ以後は「虚子」の二文字がいつも頭の片隅を離れない日々を送ることとなりました。

昭和六十三年七月、高田風人子さんの「惜春」の創刊に参画させていただいたのも楽しい勉強でしたし、また平成十二年冬、深見けん二・今井千鶴子さん方の「珊」に、藤松遊子さんの後継として参加を許されたものありがたいことでした。一方逗子に住んでおったお陰で草間時彦・高橋睦郎といった方々のお話を近しく伺えたことで少し視野が広がったようにも思います。

「夏潮」発刊に当たって多くの方の応援をいただきました。就中「祝辞・祝句」をお寄せ下さった十二人の先輩方にはお礼の申しようもありません。お励ましの言葉に違わぬよう専心努力いたす所存です。

俳句は、まず楽しいものだと考えています。俳句会や吟行で「季題」と出会い、それらを敬し、讃美するとき。造化の大きな運行に身を任せつつ十七音に心を委ねるとき。そして句仲間の最初の読者として、その作品にふれるとき。

「夏潮」に参加してくださった仲間達、大先達虚子の後姿を見失わないように、この道に励もうではありませんか。