鷽の夫婦 本井 英
雪晴のカーブミラーに映る村 二十数本の氷柱や潤び垂れ 雪折を剪り下ろしたる鋸屑ぞ 公魚を背中合はせに穴に釣る 味噌汁が公魚釣に届きけり
ジグザグに声降りてくる梅の丘 点睛は奥村土牛龍に春 いちご狩賑はつてゐる梅の村 ガレージに押しつけながら野梅咲く 右耳にずつと春濤渚ゆく
干し上げて若布本末 ありにけり うららかに席のうまりて始発駅 朝日まだ及ばぬ溝の底に芹 姐御然腰元然や針供養 午後はもうミシンに向かひ針供養
山笑ふ横須賀線もこころより おいなりさん買つて帰りて春炬燵 下萌を梨の枝影這ひまはり 古民家をつぎつぎ閉ざし日永かな 庭桜鷽の夫婦に目つけられ (一部「俳句」四月号と重複)