主宰近詠(2013年5月号)


鷽の夫婦  本井 英

雪晴のカーブミラーに映る村

二十数本の氷柱や潤び垂れ

雪折を剪り下ろしたる鋸屑ぞ

公魚を背中合はせに穴に釣る

味噌汁が公魚釣に届きけり



ジグザグに声降りてくる梅の丘

点睛は奥村土牛龍に春

いちご狩賑はつてゐる梅の村

ガレージに押しつけながら野梅咲く

右耳にずつと春濤渚ゆく



干し上げて若布本  ありにけり

うららかに席のうまりて始発駅

朝日まだ及ばぬ溝の底に芹

姐御然腰元然や針供養

午後はもうミシンに向かひ針供養



山笑ふ横須賀線もこころより

おいなりさん買つて帰りて春炬燵

下萌を梨の枝影這ひまはり

古民家をつぎつぎ閉ざし日永かな

庭桜鷽の夫婦に目つけられ

           (一部「俳句」四月号と重複)