六 花 本井 英
橋あれば島へも行かな恵方なる
扁額の鳩が八なす初詣
餅花に肩が触れては揺るるかな
ややありて羽子板とりに戻りきし
台所終へて妻来る歌留多かな
鼠引くやうにかたみに切山椒
猿曳と猿とおんなじ紋所
冬帽を売るや鏡に空映り
寒釣より戻りて独り風呂沸かす
渓道をとれる下山や冬苺
Mさんの転勤に
天竺へ発つ餞の
六 花 (
停車駅ではゆつくりと降れる雪
寒晴の鳶と浮かべる我が心
雪折を剪りてはありて片付けず
雪折のやうに死ぬるは痛からん
火事の火が数秒よぎる車窓かな
青空に吊り上げらるる凍死かな
寒の宮末社三つ四つみな狐
咲ききりて盆梅所在なかりけり
磯海苔を摘むと連れだち島女