褒められもせず 本井英
お降やそれでも浜に二三組
神の池淑気湛へて皺はむなし
初神籤読み上げ合うてゐたりけり
初富士や昼過ぎてやはらかくなる
七福神どれも小ぶりや詣でけり
つついたりひつちぎつたり寒鴉
大前に褒められもせず寒鴉
漬けてある砥石薄さよ寒の水
煮凝や鞣せしがごとつやりとす
煮凝や酔余といへど昨夜のこと
鐘ヶ淵あたり河ごと冬ざるる
午後の日の辷り流るる寒牡丹
緋毛氈枯木の奧に見えてをり
雪折の雪ふりほどくことならず
倒木を抱かんと雪たゆまざる
一昨日の雪の匂ひに木立かな
榛の木の乾いて立てる雪の原
春節も昏れかたになり賑はへり
春節の獅子のぐぐぐと伸び立てる
丘ひとつ迂回して梅探るかな