主宰近詠(2012年4月号)


 褒められもせず       本井英

お降やそれでも浜に二三組

神の池淑気湛へて皺はむなし

初神籤読み上げ合うてゐたりけり

初富士や昼過ぎてやはらかくなる

七福神どれも小ぶりや詣でけり




つついたりひつちぎつたり寒鴉

大前に褒められもせず寒鴉

漬けてある砥石薄さよ寒の水

煮凝や鞣せしがごとつやりとす

煮凝や酔余といへど昨夜のこと




鐘ヶ淵あたり河ごと冬ざるる

午後の日の辷り流るる寒牡丹

緋毛氈枯木の奧に見えてをり

雪折の雪ふりほどくことならず

倒木を抱かんと雪たゆまざる




一昨日の雪の匂ひに木立かな

榛の木の乾いて立てる雪の原

春節も昏れかたになり賑はへり

春節の獅子のぐぐぐと伸び立てる

丘ひとつ迂回して梅探るかな