未草鯉の濁りに揺られつゝ 和子 (泰三)

 一気に秋が深まり、自転車通勤がつらいと思い始めている泰三です。皆さんはいかがお過ごしですか。

 夏潮10月号雑詠より。季題は「未草」で夏。角川歳時記には、「白い清楚な花をつける。花が未の刻(午後二時頃)に開くと言われこの名がある」と説明される。

 未草は、池や沼に咲く。池の面には流もなければ、波打っていることもない。未草を揺らすもはさざ波ぐらいで、普段大きく揺れることはない。しかし、この句ではどんぶりと揺れた。揺らしたものは鯉だ。葉と葉の間を大きな鯉が濁りを立てながら泳いでゆく。しかしこの揺れもしばらくたてば止み、また静かな景色が戻ってくることであろう。可憐な未草の静かな咲きざまが目に浮かぶ佳句である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください