ゼノア・ジブ 本井 英 字の名を寺分とかや髢草 鯥五郎の水平線は遠く細く かろかろと音の乾きて昼蛙 爺が岳にピークが三つ夕蛙 民宿の畳ぶかぶか蛙の夜 ゼノア・ジブ遙かを辷り夏霞 舟を下りて沖見る日々や夏霞 ぽつちりと利島はありぬ夏霞 その色の楝の花と知れるまで 夏空を仰ぎ回して雲さがす
仁王像怒張の四肢を薫風に 燕らに旧江戸川といふ水面 清潔にあり紫陽花の蕾と葉 色抜けてゆくは即ち小判草 舌端の泡だちながら卯浪寄す 離り来て若葉の上に天守閣 蚕豆の莢もくもくと太々と 蚕豆の「おはぐろ」きりと結びけり ほととぎすかな西御門あたりより 鎌倉のいづこの谷戸も金銀花