庵主われ 本井 英
黄をおびて明るきときの蘆火かな 沼の小春の日向径日蔭径 ゆかしさや沼離れゆく落葉径 鴨の足へなり〳〵と搔く見ゆる 浮かび出て濡れてをらずよ鳰
冬川へ笯を放りこむ音遅れ 灯を暗く別当寺や神の留守 一村の新海苔景気干しつらね 雪といふ名ぞ消えやすき一茶の忌 小春日をちまちま愉し花やしき
予想屋も聞き入る客もマスクして 菊屋形背中日当たりをりにけり 菊屋形降り出しさうや降りだしぬ 蜘蛛の糸つつつと冬日走る見ゆ 飛べるものどれも小春の日をまとひ
玄室へつながつてゐる落葉径 落葉溜りへ源流の失せにけり 子規の字の読むにたやすし句碑の冬 わが膝をしばし探りて冬の蠅 冬の蠅と親しむことも庵主われ
主宰近詠(2022年2月号)
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