日の落ちて喪中の友へ初電話   小林一泊

 季題は「初電話」。電話が世間で普及して、「年賀状」に倣うようなかたちで、年始の挨拶を「電話」で交わすというような、一寸洒落た気分が漂っていた時代もあった。立子先生に〈初電話ありぬ果して父の声〉という句もある。時代は移って今は「メール」や「ライン」というのがかつての電話に成り代わっているようだ。

 さて一句は、ある友人について今年は「喪中」であるために年賀状を交わすこともない。しかし、どうしているだろうか。親御さんを亡くされたのか、はたまた連れ合いか、この句からでは判らないものの、作者は友人の淋しさを思いやっている。そこで思い立って夕刻過ぎに電話をしたのである。一句の味わいどころは「日の落ちて」。新年の日射しの中では、どこか晴れ晴れとした気分が先に立ってしまって、「喪中」の家への電話は憚られたのであろう。元日の持つ「ハレ」の気分の裏側を見事に捉えた句になった。(本井 英)

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