留蓋にまつはり落つる雪解水    田中 香

 季題は「雪解水」。「雪解」の傍題である。「雪解川」に注ぐ前のさまざまな形、状態が「雪解水」にはある。「留蓋」は「留蓋瓦」の略。神社仏閣などの屋根の四隅にあって、雨水がしみ込むのを防ぐ瓦。多くの場合獅子などの装飾がされている。その「留蓋」に纏わるように流れる「雪解水」は屋根に残っている雪が解けたものに違いない。

 ここまで理解できたら、あとは読者の自由。読者の記憶の中にあるお堂の大甍などを思い出して、その下半分くらいには未だ雪が積もっていて、今日の春めいた日差しに一気にとけた「雪解水」が勢いよく瓦を滑り下って、「留蓋」の辺りで、少し纏わるように流れて、鎖樋を伝って天水桶に注ぐ。そんな一連の動きは、日本に何十年か住んで、俳句を数年作れば、誰にでも容易に「目に浮かぶ」。(本井 英)

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