主宰近詠(2016年10月)


病ひあるか   本井 英

その白のいとけなきかな菱の花

三日目の四日目の紅蓮の花

蘆原をこまかく移り行々子

恋みくじ子供みくじも宮の夏

白南風に槙垣高き安房の町



夏暖簾分けながらはや笑まひをり

どぜう鍋年かさらしく振る舞ひて

土用芽のひとつ許さずご本山

オープン・キャンパス緑蔭もまたよろし

オープン・キャンパス学食も冷房で



朝虹やライフ・ガードがはや浜に

フラダンス・ショー再開や虹も立ち

茶畑に刺さつてをりぬ虹の脚

虹の脚あたりの屋並み虹に染まり

嵌めこまれ蟬の眉間にルビーめき



山梔子の実の真緑のよそよそし

にいにい蟬抑揚なきが疎ましや

牛蛙忘れてくれなとも聞こゆ

無患子の青き実落つは病ひあるか

指すこし沈む完熟トマトかな