八月が終わってしまい、いささかセンチメンタルな気分に陥っている泰三です。
季題は、「藤」で春。山野に自生しているものは、滝のように山を覆い尽くす野性味に溢れているが、この句の場合は、棚に仕立ててあるもの。藤が咲く時期、立派な棚のある神社などでは藤まつりが行われる。大人達はもちろん、藤の花を楽しむのであるが、連れてこられた子供にとっては花なんて一寸見れば十分である。子供に取ってみれば池の亀の方がよっぽど面白い。
言われてみれば藤まつりと言っても、真剣に藤を凝視するのは俳人ぐらいで、一般の人は藤というよりも、その雰囲気を楽しむものであろう。子供ならなおさらである。この句は、藤そのものから目線をずらした面白い句だと思った。