主宰近詠(2011年9月号)


素通りす   本井 英

口論の収拾つかず行々子

粟津 義仲寺二句

蟻の道翁の墓を素通りす

蚊の闇にかけつらねあり俳仙図



鎌首をもたげ玉巻く葛ぞこれ

紫陽花や素人塗りに白ペンキ

つぶつぶと肥えていよいよ枇杷の色

花菖蒲へカメラの腰のかがみゆく

釣堀に並べビールの通ひ箱



釣堀やおもむろに解く竿袋

釣堀の手洗ひに吊る網石鹸シャボン

織機の音あふれ出てくる網戸かな

長けぬれば余苗にも志

二羽で来て泥啄ばみてつばくらめ

いたち川木下闇へとさしかかり



花片ハナビラの尖のさみどり浜おもと

どつちから見ても正面立葵

青柿の四角く太りはじめたり

雪渓の駆け込んでゐる樹林かな

雪渓の口のへの字を覗き込む

青蘆を分けきて我をいだく風