顎をしやくつて 本井 英
湯煙をひつちぎりては野分めく 秋風に湯けむり茶屋は蒸籠干し ゐし鵙の軋りつつ飛び去れるかな 斑猫は水を舐めたり耳掻いたり 数珠玉や筑紫次郎もかく細り九州小国 五句
久女棲みし板櫃河畔鯊の夕 磯原の鴫ごと暮れて沖明かり 峠越ゆればまた別の稻筵 栗剥くに包丁の顎使ひやう 秋冷や 鋲 多に柳橋小倉
香取神宮黒々と社殿ひややか戦神 閘門が上がり見え来る水の秋 勁きもの女心や西鶴忌 蟷螂の踏まれず枯れず路の上 栗石の白のことさら紅葉川
仙台・松島 三句城裾を褶曲したり河の秋 川風に皀莢子の実の震ふ鳴る 黒々と育つ新海苔浪のむた 鵯いまは心安らかキヨロと啼き 赤とんぼ顎をしやくつて吾を見たり