主宰近詠(2016年1月)


顎をしやくつて 本井 英

九州小国 五句

湯煙をひつちぎりては野分めく 秋風に湯けむり茶屋は蒸籠干し ゐし鵙の軋りつつ飛び去れるかな 斑猫は水を舐めたり耳掻いたり 数珠玉や筑紫次郎もかく細り



小倉

久女棲みし板櫃河畔鯊の夕 磯原の鴫ごと暮れて沖明かり 峠越ゆればまた別の稻筵 栗剥くに包丁の顎使ひやう 秋冷や 鋲  (リベット)多に柳橋



香取神宮
黒々と社殿ひややか戦神 閘門が上がり見え来る水の秋 勁きもの女心や西鶴忌 蟷螂の踏まれず枯れず路の上 栗石の白のことさら紅葉川



仙台・松島 三句
城裾を褶曲したり河の秋 川風に皀莢子の実の震ふ鳴る 黒々と育つ新海苔浪のむた 鵯いまは心安らかキヨロと啼き 赤とんぼ顎をしやくつて吾を見たり