課題句「鱚」 今井舞々 選 浅瀬にて産卵したる鱚なれど 河内玲子 群なさず浅瀬のそこに鱚泳ぐ 近藤作子 鱚の群れ白砂すれすれ泳ぎ行く 浦上ひづる 春の海白き魚のむれ泳ぐ 清水マリ 砂浜の女王たるらし鱚を釣る 原 三佳
課題句(2025年5月号)
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課題句「鱚」 今井舞々 選 浅瀬にて産卵したる鱚なれど 河内玲子 群なさず浅瀬のそこに鱚泳ぐ 近藤作子 鱚の群れ白砂すれすれ泳ぎ行く 浦上ひづる 春の海白き魚のむれ泳ぐ 清水マリ 砂浜の女王たるらし鱚を釣る 原 三佳
季題は「年玉」。正月、親から子供たちに与える金銭や品物である。古代に遡れば年頭に当たって、その「氏の長者」が付随う者達に「分け与える」、その年の「霊」であった。やや大袈裟に謂えば、その年を無事に生きる為に必須な「魂魄」ということだったのだろうが、現代ではそんなことは誰も思ってもみない。まあ新年に親が子に与える「特別なお小遣い」といった程度の意味合いで、親戚筋の子供たちにも配られることから、一族が集まる新年の宴席では子供たちの重大な関心事にもなる。一句の場面はそんな「孫・曽孫」に囲まれた作者の軽い驚きであろう。数年前までは小さな孫たちだったものが、いつの間にか大人びてきて、中には「金髪に染め」ている者まで居たというのである。髪を「金色」に染めることの是非は「両親」の育て方の範囲であって、祖父母が是非を唱えるべきものではない、という認識を前提としての一句であるが、少々不思議な気分を味わっておられる作者を思うと、ゆっくりとした時代の流れが見えてきて、楽しい一句になった。「昔はねえ」という科白も聞こえて来そうな場面だ。(本井 英)
金髪に染めし子をりてお年玉 町田 良 鶺鴒の尾のとんとんと御慶かな ドバイより戻りしも来て新年会 骨折の女正月とは不運なる 今は昔仕事始の晴著かな 天明さえ 雲水の百の踝風かをる 山口照男 初電話掛ける頃合ひ見計らひ 山内裕子 ゆらゆらとやがて溢れし初日かな 釜田眞吾
彼だけが 本井 英 大叔父の遺贈の火鉢桔梗萌ゆ どことなく帯びる紫桔梗の芽 川の名を小鮎川とよ田螺和 つん〳〵とこぶ〳〵と山笑ふなり 磐座のそれと仰がれ山笑ふ 象牙色のロールスロイス沈丁花 梅が枝に目白は縋り翻り 梅が枝の目白の頸のよく捩れ 日薬といふ言の葉や春障子 菜の花の黄や滾々と湧くごとし
蛇穴を出づると決めて出でにけり 江ノ電の徐行に親し梅の庭 春寒の極楽洞へ尾灯消ゆ 花韮の花ことごとく雨に閉ぢ 段取りを考へてをる朝寝かな 目をねぶりをるばかりなる朝寝かな けふも干すウエットスーツ花ミモザ オリーブも植ゑてみやうかミモザ咲く 彼だけが木五倍子の房に手が届く 目で算みて十五六ほど花貝母