金髪に染めし子をりてお年玉 町田 良

季題は「年玉」。正月、親から子供たちに与える金銭や品物である。古代に遡れば年頭に当たって、その「氏の長者」が付随う者達に「分け与える」、その年の「(タマ)」であった。やや大袈裟に謂えば、その年を無事に生きる為に必須な「魂魄」ということだったのだろうが、現代ではそんなことは誰も思ってもみない。まあ新年に親が子に与える「特別なお小遣い」といった程度の意味合いで、親戚筋の子供たちにも配られることから、一族が集まる新年の宴席では子供たちの重大な関心事にもなる。一句の場面はそんな「孫・曽孫」に囲まれた作者の軽い驚きであろう。数年前までは小さな孫たちだったものが、いつの間にか大人びてきて、中には「金髪に染め」ている者まで居たというのである。髪を「金色」に染めることの是非は「両親」の育て方の範囲であって、祖父母が是非を唱えるべきものではない、という認識を前提としての一句であるが、少々不思議な気分を味わっておられる作者を思うと、ゆっくりとした時代の流れが見えてきて、楽しい一句になった。「昔はねえ」という科白も聞こえて来そうな場面だ。(本井 英)

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