課題句 「蛇」 川瀬しはす 選 草中を蛇泳ぐごと逃げゆける 山本道子 蛇泳ぎをるよと人の集まり来 ずずずずず天井裏の屋敷蛇 遠藤真智子 衆目を集めくちなは身じろがず 山内裕子 淡々とバターで蛇を掬ひ上げ 杉原祐之 竹垣の上長々と青大将 石山美和子
課題句(2025年6月号)
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課題句 「蛇」 川瀬しはす 選 草中を蛇泳ぐごと逃げゆける 山本道子 蛇泳ぎをるよと人の集まり来 ずずずずず天井裏の屋敷蛇 遠藤真智子 衆目を集めくちなは身じろがず 山内裕子 淡々とバターで蛇を掬ひ上げ 杉原祐之 竹垣の上長々と青大将 石山美和子
季題は「梅」である。春の季題でありながら、つねに「寒さ」と背中合わせの感じが強いし、「探梅」という季題になると、ともかく「咲いているかも知れない梅の花を求めて」寒中の野に立ち出ることになる。「大気の湿り気」は即ち「湿度」。梅の咲く頃の湿度は、地方によってさまざま。となるとこの句、詠まれた地方によって味わい方が少々異なるのかもしれない。例えば日本海側の雪の多い地方の場合。春になって晴天の日々が続いても、どことなく「湿り気の残る大気」の中で、漸く梅も綻び始めた、と言う気分が伝わって来るし、これが東京などのようにこの時期「乾燥」することの多い地方なら、昨日久々に降った「雨」の湿り気が今日も残っておって、という喜ばしい気分に充ちてくる。どのみち着実に進行する早春を讃える、しみじみした佳句となっていよう。(本井 英)
湿り気の残る大気や梅香る 山内裕子 うとうととしてゐる背中春隣 穏やかに晴れ梅白し空青し 若布刈舟四人がかりで引き上ぐる 取り込みし干し物温し日脚伸ぶ 都築 華 登園もあと幾日よいぬふぐり 原 三佳 漂へる遠き野焼の匂ひかな 塩川孝治 春水のさらさらさらと御料地を 梅岡礼子
走れば速し 本井 英 ホルスタイン走れば速し草芳し 犬ふぐり腰高に咲くあたりかな 底砂に水馬の影の五ツ紋 栗鼠跳んで小枝の古巣揺るるかな 雉鳩のひんと翔び去り花埃 鎌倉や挙げて灌仏日和かな ポリタンク甘茶の色の透けてをり 万太郎句碑や悪所の花の昼 今朝の佳きこと初燕見たること 真間寺や寺領こぞりて花を吹き
江戸までの水路ありきと草朧 杉菜長けすかんぽさらに長けまさり 牡丹のおむすびほどの蕾かな 花了へて貝母の裾辺黄ばみ果て 蕗原のふかぶかとしてきたりけり 畦塗機水の補給も肝要な 畦塗機指南美直老やさし 宿木も若葉そなへてそれとあり 虚子庵の紫菀ぞ草若葉なせる 筍の踝ほどな膝ほどな