日別アーカイブ: 2012年2月11日

石積みの上にぽつかり刈田かな 矢沢六平(2012年2月号)

季題は「刈田」。稲刈りの済んだばかりの田である。暫くすると穭が生い出、やがては「冬田」となる。「石積み」ということは棚田になっているのであろう。夏場、稲の丈が揃ってからは毎日、一定の嵩のある田の面であった。それが「稲」を刈り取ってしまうと、あっけらかんと、頼りなげな空間が広がるばかりとなってしまう。作者は棚田に沿った畦道を下の方からゆっく登っていったのである。そしてある場所にさしかかると、何日か前までとは違う空間、「あった物がないという空間」が目に入ってきたのだ。「ぽっかり」という状況を見出した軽い驚きが一句になっている。毎日田んぼの中で暮らしているからこそ、得られた新鮮な「驚き」であろう。(本井英)

雑詠(2012年2月号)

石積みの上にぽつかり刈田かな	矢沢六平
落し水立枯草を押し分けて
解体や裸の稲架となればすぐ
夕暮を案山子担ひて帰りけり

菊花展の菊首ねつこ支へられ 渡邉美保 グローブの様な生姜を供へあり 阿久津稜子 無花果をもがんとすればごわと葉や 天明さえ パドックの馬の歩様(ホヨウ)も秋日和 冨田いづみ
					

主宰近詠(2012年2月号)


くらりとす           本井英

京極杞陽三十年忌の旅 八句

いつの間に単線となり蔦紅葉

三丹は豊かにさびし柿を干し

心組み来たりしままに時雨をり

逆波の円山川ぞ時雨るれば

一舟を舫ひて菊に棲めるかな




行李柳枯るるにつけて偲ぶなり

ふるき湯にふるき佳き宿冬紅葉

息白く朝の外湯へ町の人



河のごと狭められても鯊の潮

沼蹴つてゆく凩の足裏かな

顔見世の昼の日中の玄冶店

なまぬるき雨が注ぐよ都鳥

客寄せに据ゑて鮪の大兜



巫女ふたり雨の無聊の神無月

その奧の実にも日当たりさねかづら

榛の実の沈みて黒き冬の水

攫はんとすれば大綿くらりとす

冬菊の黄の濃く臙脂さらに濃く



鵯がくつろぎの声零すとき

ほの揺れて隠れ磯とは椿の名