投稿者「taizo」のアーカイブ

イワン・デニーソヴィチと一ト日落花生 茂之 (泰三)

 まだまだ寒い日が続いております。いかがお過ごしでしょうか。

 落花生は、秋の季題。虚子の句に

落花生喰ひつつ読むや罪と罰

があるが、この句は、落花生を食べながら、『イワン・デニーソヴィチの一日』を一日中読んでいるという句。落花生は、読書のお供に持ってこいの食べ物だ。この小説には、淡々とイワンの一日が描かれている。長い時間『イワンの一日』を読んでいるうちに、あたかも「イワンと一ト日」を過ごしているように感じた。特徴的な小説の原題を上手く使って一句に仕上げた句である。博識な作者ならではの句だと思う。

 

水引のもつれやすくてとけにくく 桂子  (泰三)

 新年会では、娘発熱のため、宴会に出られず誠に残念な思いをしました泰三です。まだまだ寒い日が続いておりまして油断大敵ですね。皆さんはいかがお過ごしですか。

 季題は、「水引」で秋。すういと伸びた茎にぽつぽつと紅色の花がついている。その花のおかげでこの句に言われいる通り、お互いもつれ合ったりしている。引き離そうとしても、花が引っかかり、まことにとけにくい。生け花か何かしているのだろうか。思い通りにならない「水引」が何ともいとおしい。

無花果の乳したたらせもがれけり さえ  (泰三)

 会う人会う人に「太ったね」と言われる泰三です。皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 季題は、無花果(いちじく)で秋。何とも特徴のある形をしている。しかし、この句は、形については何もかたらない。もがれるとき、乳の如き汁がしたたっていることを述べているだけである。ただ、無花果から出てくる汁を「乳」と言い切ったことで、無花果の乳房の様なあの形までも読者に連想させる。「乳房の如き」と言った形を直接描写する表現を避け、季題を見せることに成功している巧みな句である。