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雑詠(2018年11月号)

井戸はまだ生かしてありぬ柿青し         児玉和子
白南風に沼面ゆるゆる押されをる
浜木綿の蕊踊らせて咲けるかな
椿とも薔薇ともほぐれ水中花

河骨や濁れる雨後の水に立ち     江本由紀子
まだ誰も起きてこぬ朝月見草     山内裕子
心地良い疲れ運動会も済み      西岡あやめ
烏瓜の花のむくろの白さかな     天明さえ

主宰近詠(2018年11月号)

南なだりの   本井 英

梅を干し了へたる笊を干してある

梅花藻の花端正に白に黄に

藻の花を水しわしわになりて梳く

真清水に薬罐 が漬けてありけるよ

川底に浪皺の影涼しけれ




雨あとの茎のつやつや滑莧

新涼の風我が耳を澄ませゆく

新藷をさぐり掘りせし痕ならめ

はだかりて発電パネル鳳仙花

しもつけの咲かなんとして濃かりけり




野の風に夏帽の鍔べのべのす

湿原に兄貴然たり油がや

のうぜんや村の暮らしを愛し棲み

岳麓の南なだりの豊の秋

江ノ電の涼しさは極楽寺のあたり




ばらまいて白ならぬなきヨットの帆

色見本のやうやデイゴは赤極め

片陰に呑みこまれたる蜑が路地

秋濤の炸裂しては霧らひては

秋濤の飛沫かはして磯鵯は

課題句(2018年10月号)

「秋風」		冨田いづみ選

透き通る音聞くやうに秋の風		塩川孝治
駅前はシャッター通り秋の風

崖削る砂さらさらと秋の風		町田 良
島山をのぼれば秋の風の吹く		藤永貴之
送別の歌秋風の棧橋に		梅岡礼子
秋風やあるがままなる今日も暮れ	岩本桂子

からつぽの水鉄砲に撃たれけり  小野こゆき

 季題は「水鉄砲」。昔は竹の筒などを細工して拵えたものだが、近年ではプラスチックの、良く飛ぶ「水鉄砲」が案外廉く売られている。夏の暑い午後などは水をかけられても、却って気持ちが良く、結局はずぶ濡れになるまで水を撃ち合ったものである。さて一句の主人公は大人。子供が、もう水の切れてしまった「水鉄砲」で撃ちかけてきたのに対して、サービスで「撃たれ」たのである。その撃たれる様子を出来るだけ、リアルに、あるいは大袈裟に、つまり子供の方が喜ぶように倒れ込むところが、期待される大人の演技である。普段なかなか子供の相手をしてやれてないとの自覚のある大人ほど「名演技」を示す。軽い興味の句であるが、「大人」の一生懸命さも見えて嬉しい。(本井 英)

雑詠(2018年10月号)

からつぽの水鉄砲に撃たれけり			小野こゆき
菖蒲田に花殻摘みの赤襷
黒南風にぐらぐら浜の信号機
ディンギーの鱚釣舟を縫ひゆけり

吾子もゐる運動会の楽きこゆ			藤永貴之
初夏や嬰の足指豆のやう			牧原 秋
碁盤商溽暑の町にしんとあり			児玉和子
十薬や躙り口には鍵掛けて			岩本桂子