からつぽの水鉄砲に撃たれけり  小野こゆき

 季題は「水鉄砲」。昔は竹の筒などを細工して拵えたものだが、近年ではプラスチックの、良く飛ぶ「水鉄砲」が案外廉く売られている。夏の暑い午後などは水をかけられても、却って気持ちが良く、結局はずぶ濡れになるまで水を撃ち合ったものである。さて一句の主人公は大人。子供が、もう水の切れてしまった「水鉄砲」で撃ちかけてきたのに対して、サービスで「撃たれ」たのである。その撃たれる様子を出来るだけ、リアルに、あるいは大袈裟に、つまり子供の方が喜ぶように倒れ込むところが、期待される大人の演技である。普段なかなか子供の相手をしてやれてないとの自覚のある大人ほど「名演技」を示す。軽い興味の句であるが、「大人」の一生懸命さも見えて嬉しい。(本井 英)

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