主宰近詠(2018年11月号)

南なだりの   本井 英

梅を干し了へたる笊を干してある

梅花藻の花端正に白に黄に

藻の花を水しわしわになりて梳く

真清水に薬罐 が漬けてありけるよ

川底に浪皺の影涼しけれ




雨あとの茎のつやつや滑莧

新涼の風我が耳を澄ませゆく

新藷をさぐり掘りせし痕ならめ

はだかりて発電パネル鳳仙花

しもつけの咲かなんとして濃かりけり




野の風に夏帽の鍔べのべのす

湿原に兄貴然たり油がや

のうぜんや村の暮らしを愛し棲み

岳麓の南なだりの豊の秋

江ノ電の涼しさは極楽寺のあたり




ばらまいて白ならぬなきヨットの帆

色見本のやうやデイゴは赤極め

片陰に呑みこまれたる蜑が路地

秋濤の炸裂しては霧らひては

秋濤の飛沫かはして磯鵯は

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